バックナンバー:186 2010/9/15


読者の皆様、お元気でお過ごしでしょうか?

 

ドイツは秋に入ってきました。ドイツで秋、というと、幼稚園、小学校の入

(園)学式、庭仕事、それから収穫祭、ハロウィン・・・・。そして秋の味覚

は・・・・・・!

 

私が8月末から試している新しいインターネットブラウザ「グーグル・クロー

ム」。内臓エンジンがそのページの言語を認識して翻訳しますか?と聞いてき

ます。ロシア語だったり、韓国語、中国語などでもOK。ただ、コンピュータ

ーソフトの翻訳は微妙です。でもまったくちんぷんかんぷんよりは良いか、と

いう程度。でもこれはこれで結構面白くはまってしまいます。それから検索す

るとヒットしたものが縦に何個も表示されますが、右端をポイントするだけで

だいたいの内容がポップアップされるのも便利です。

 

先回のメールマガジンに書きましたルフトハンザA380の写真があります。

http://www.welt.de/reise/article7696048/Lufthansa-erhaelt-ihren-ersten-A380.html

やはり、ビジネスクラスとかファーストクラスはすごいですね。

 

ドイツでは新しい予算案が政府より提出され、これから国会で協議されます。

緊縮財政ですが、その中には徴兵制を徐々に減らし、職業軍人だけにする、と

か、失業者への援助が削られるとか、エネルギー関係、航空税などの提案が盛

り込まれています。

 

ヨーロッパ内では銀行に対する自己資本を増やすという自己資本比率規制「バ

ーゼルIII」が合意されました。これからの起こりうる金融ショックに対し、

銀行が政府の援助を受ける必要がないように体力をつけることが目的です。

 

アメリカではオバマ米大統領の公約であるイラクからの撤退が実行されました。

決して良いイメージで終わったわけではないのですが、この撤退により政府の

財政はかなり救われているはずです。そして、経済問題に資金を回す余裕がで

きたかもしれません。ただこの決定によって大変なのはイスラエル。頼りのア

メリカ軍がまだ5万兵残っているとはいえ、中東から撤退してしまったのです

から。このままオバマ政権が続けば、アメリカのユダヤ人の発言力が縮小して

しまう事もイスラエルにとっては問題です。中東とアメリカで今後ユダヤ人

がどんな対策に出るのでしょうか? 目が離せませんね。

 

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■ ドイツの秋の味覚 キュルビス・ブロート、きのこ、フェーダーワイン

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ドイツは確実に秋に突入しています。気温は日中でも20度を切ります。既に

紅葉を始めた樹木も見かけます。マルクトやスーパーにはりんご、プラム、そ

して大きな大きなかぼちゃなどの秋の農作物が並んでいます。このかぼちゃで

すがスイカくらいの大きさなんです。ドイツ人はスープにする事が多いようで

すが、秋の特別なドイツの味覚として「キュルビス・ブロート」があります。

キュルビス「Kuerbis(ueはウムラウトです)」はかぼちゃ、ブロー

ト「Brot」はパンの意味です。かぼちゃのパンはこの時期にしかありませ

ん。そしてどこのパン屋さんにもある、というものではありません。先日夏休

みでブレーマーハーフェンの実家に帰宅していた娘は「デュッセルドルフでは

見たことがない。」と言っておりました。ちょっと甘い、薄い黄色の食パンに

似た柔らかいパンはドイツの秋の始まりを意味します。

http://www.chefkoch.de/rezepte/343983785828/Kuerbisbrot.html

 

それから今年の夏は雨が多かったようで、森にはたくさんのきのこが生えてい

るらしいです。イタリアでは今までに16人に死者を出しているそうです。

 

毒キノコ?

 

違います。

 

きのこを採取に行って、がけから転落するなどの事故なんだそうです。安全な

所のきのこがなくなってくると、ちょっと採りにくいところに立派なきのこを

発見するとつい頑張って採りたくなる気持ち、分かりますが、命の代償には大

きすぎますね!

 

ドイツに限らずヨーロッパには食用のきのこの種類は豊富です。ドイツ語でピ

ルツェ「Pilze」がたくさん出てくるのもこの時期です。

http://www.google.de/images?hl=de&tbs=isch%3A1&sa=1&q=pilze+markt&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=

 

そして、日本の

松茸のようにヨーロッパのきのこの王様はシュタイン・ピルツェ(Stein

Piltze)があります。

http://www.google.de/images?um=1&hl=de&tbs=isch%3A1&sa=1&q=steinpilze+rezept&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=

 

「今が旬 フェーダーワインとツヴィーベルクーヘン」に関してはバックナン

バー、2006年の9月1日号をどうぞご覧ください。

http://homepage3.nifty.com/~motohasi/oboe/magazine/backNr10/backnr104.htm

 

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■ ヴィンシャーマン教授 公開レッスン

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925日(土)13:0015:00東京音楽大学Jスタジオにて、

 

聴講は無料です。

 

詳細(チラシ)は、私のホームページをご覧ください。

http://www.oboeinfo.de

 

このメールのご質問フォームにてご質問を頂きました方、返信先をご記入が無

かった為にこちらからご返答できませんでした。ご質問内容は「東京音楽大学

でのヴィンシャーマン教授の講習会に申し込みが必要でしょうか?」でした。

 

お申し込みは不要です。講習会開始が13時ですので、15分くらい前に会場

に入られれば結構かと思います。

 

今の若い方はヴィンシャーマン先生のお名前をご存知ない方がいらっしゃるか

もしれませんので、本日は少し先生のご紹介いたします。

 

ヘルムート・ヴィンシャーマン先生は今年90歳になられました。ミュールハ

イムに生まれ、オーボエをエッセン音楽大学でシュレーという先生に習ってい

ます。この先生のお弟子さんでもう一人スーパースターが生まれております。

その人の名は、ローター・コッホ。大学に入った1年目にはヴィッテン、その

後バード・ホームブルク、オーバーハウゼンのオーボエ奏者を歴任。戦後フラ

ンクフルトのラジオシンフォニーの首席奏者。カール・ベーム、ウィルヘルム

・フルトヴェングラーなどの指揮の元、歌うオーボエとして活躍し、フルトヴ

ェングラーにベルリン・フィルへ来るように誘いを受けていました。1952

年、それを断りデトモルト音楽大学の教授に就任。1982年まで彼の教えを

受けたオーボエ奏者たちをざっと挙げてみても、ゴリツキ、ギューシング、ニ

ックリン、パッシン、シェレンベルガー、シュマルフス、ウィンター、ツォル

ン、ゾウス、ユリウス・コッホ、宮本、安原、岩崎、松山、河野、北島、大嶋、

鈴木、城石、諸岡、七沢、辻、ブッホルツ、ヴァルコール等等。

 

1954年にアムステルダム・コンセルへボーのオーボエ奏者として代理を務

める間に、指揮者ラファッル・クーベリックに「私のマーラー、オーボエ奏者」

と賞賛を受け、グスタフ・マーラー賞を受ける。

 

1960年、ボンのドイツ外務省の後援を受けドイツ・バッハ・ゾリステンが

結成されました。ゲーテ・インスティチュートと協同で世界中にドイツの代表

的な作曲家バッハを紹介する役割を担いました。バッハのオーボエ協奏曲、ヴ

ァイオリンとオーボエの為の2重協奏曲はヴィンシャーマン先生の十八番でし

た。この団体ができてからヴィンシャーマン先生は指揮を始めるようになり、

この大きな手は世界中の聴衆を魅了し、我々弟子たちの授業では音楽のインス

ピレーションを与えてくれました。世界各地で演奏会を開きその功績を称えド

イツ政府から勲章(Bundesverdiestkreuz Erster

 Klasse)を1970年に授与されています。

 

また、バッハのオリジナル作品の演奏に加え、「フーガの技法」「音楽のささ

げ物」「ゴールドベルク変奏曲」の室内オーケストラ版への編曲も手がけてい

ます。モーツアルトの管楽八重奏をオーボエと弦楽器とのオーボエ五重奏に書

き変えたのも、今当たり前にオーボエ奏者のレパートリーに加わっているオー

ボエ・ダモーレ協奏曲もヴィンシャーマン教授により編曲されたものです。

 

ヴィンシャーマン教授の授業は、音楽のスタイルを重要視しており、バッハに

はバッハの、マーラーにはマーラーの、現代音楽には現代音楽の表現を弟子た

ちに教えてくれました。この作曲家による演奏スタイルの特徴、時代による変

化は特に重要で、デトモルトの先生方は当時、指揮者で学長であったシュテフ

ァーニ、クラリネットと管楽アンサンブル担当のミヒャエルスも例外ではあり

ませんでした。音楽というヨーロッパの歴史的な遺産を受け継いでいく専門的

なポイントとして、スタイルから外れない演奏、というのはこのようにドイツ

の音楽大学で継承されていきます。

 

新しい大学生が入ってきた時の最初の授業では、そのスタイルを踏まえて如何

に音楽を自由に表現していくか、という事を先生は説かれます。先生の授業は

原則として公開で、レッスン中はいつも何人かの学生たちが耳を傾けています。

レッスン中、自分の演奏だけでなく、他人のレッスンを聞きながら、弟子たち

は数分ごとに音楽の表現、音色が変わっていくレッスンを興味深く観察し勉強

していました。

 

今回、日本でそんなレッスンを再現して頂けるのは一弟子として嬉しい限りで

す。そして、オーボエのプロを目指す方に限らず、音楽を愛する多くの方々に

是非先生の音楽の講義を聴講して頂ければ、と希望いたします。

 

「音楽はこんなに生きている!」ということがひしひしと伝わり、あなたの、

これからの音楽との取り組み方が変わるきっかけになるかもしれません。弟子

たちがそうであったように・・・・・。

 

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■ ドイツ政府の航空税値上げ計画

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ドイツ政府は新しく航空税の値上げを検討しています。与党の計画は、目的地

がヨーロッパ内、モロッコ、リビア、チュニジアは8ユーロ。中距離は25ユ

ーロ、長距離は45ユーロの値上げで、飛行機のチケットから直接徴収すると

いうもの。この計画に対し野党は、今年から導入されたホテルの税金の値下げ

をまず解消してからの話、としています。

http://www.welt.de/reise/article8989100/Neue-Steuer-soll-Fluege-um-bis-zu-45-Euro-verteuern.html

 

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■ ドイツ政府の原子力発電所廃止延長計画

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ドイツ政府はは前政権が決定した原子力発電所を2021年に全て閉鎖すると

いう取り決めをくつがえし、最高15年間延長する構えを見せています。理由

は簡単。安いから!そして、現在原子力発電所を持っている会社からお金を吸

い取り新しいエネルギーへの援助資金を出させよう、という魂胆です。まあ始

めから前政府の緑の党が選挙に勝つ為に打ち出した政策で、政党が変わればこ

のようになるのは目に見えていた訳ですが、元野党は裁判所に提訴する構えで

す。

 

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■ シュトゥットガルトの中央駅

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鉄道がお好きな方はたくさんいらっしゃると思います。国と国が隣接するヨー

ロッパの鉄道は国によって車両が違ったり、1台の列車でも車両によって行き

先が違ったり、と結構複雑です。駅は、日本では通過方式の駅がほとんどです

が、ヨーロッパには列車がホームに入り、出発の時には逆戻りするどん突き型

の駅がかなりあります。シュトゥットガルトの中央駅がそれです。しかし、こ

の方式の駅はきっと効率が悪いのだと思います。そして今、シュトゥットガル

トの中央駅が壊されようとしています。ところが8月終わりから始まった工事

に住民たちが反対運動を繰り広げました。中央駅はまだまだ使用可能で、これ

を高額な税金を使って建替える必要がない、というのが反対意見です。一方シ

ュトゥットガルト市とDB(ドイツ・ブンデスバーン「ドイツ鉄道」)は地下

に新しいホームを作り、鉄道のネットワークを新しく組めるようにしようと考

えています。ヴィーンの中央駅も工事しているそうですから、パリからヴィー

ンへ抜ける中継点でのシュトゥットガルトの存在を狙っているのでしょうか?

http://www.n-tv.de/mediathek/bilderserien/politik/Stuttgart-21-article1390071.html

 

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■ ドイツ証券取引所 425周年

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ドイツの証券取引所が9月10日に425周年を迎えました。1585年にフ

ランクフルト市から84の商社が一定のコインのレートを決め取引する許可を

受けたのがはじまりだそうです。証券の取引が始まったのは1409年にベル

ギーのブルージュなんだそうです。Van der Beurse(ファン・デア・ベルゼ)

家の前に人々が集まり、物々交換がなされ、黒板に取引状況が記され、出来高

が多くなると自然に価格が上がるようになったそうです。ドイツ語で証券取引

所の事をベルゼ(Boese)と言いますが、その語源になったらしいです。

ドイツでは1540年にアウグスブルクとニュルンベルクで一定の時期に商人

が集まり当時の通貨のレートを決定していたということです。

http://www.n-tv.de/wirtschaft/Boerse-feiert-Geburtstag-article1455471.html

 

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■ ミュンヘンコンクール2010年の結果 2011年はオーボエ

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今年のミュンヘンコンクールはフルート、ホルン、チェロ、ピアノデュエット

でした。結果は

http://www.br-online.de/br-klassik/ard-musikwettbewerb/ard-musikwettbwerb-preistraeger-instrumente-ID1283806126931.xml

 

BR(バイエルン放送局)のオンラインストリーミングでライブを聞きました

が、全員素晴らしい出来栄えでした。特にフルートのフランス人、ロイック・

シュナイダーのロドリーゴの協奏曲は抜群でした。彼は2009年の神戸のフ

ルートコンクールでも2位に入っていました。この時神戸で1位だったダニエ

ラ・コッホがミュンヘンでは第2位。

 

チェロ部門で入賞者2人(日本人も含め)がシュトゥットガルトの音大に在学

中。ホルンの第2位に入ったパウロ・メンデスとピアノデュエット3位のフィ

リピン人のウァン姉妹はロストックの音楽大学。

 

上のバイエルン放送局のホームページにはたくさんビデオや音声が収録されて

いますから楽しいですよ!

 

それから2011年はまたオーボエの番です。若い方、どうぞ頑張ってくださ

い。期間は8月29日から9月16日とホームページには出ております。

 

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■ オーボエ演奏のコツ (「舌つき」の嘘1)

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前にも書いたかもしれませんが、オーボエ演奏での舌の使い方として、ついて音

を出してはいけないのです。

 

どうして舌をついてはいけないか?

では音を切るのにはどうしたらいいの?

スタッカートはどうすれば早くなるの?

 

舌つきに関して色々な疑問があります。

 

そもそも、「舌つき」という言葉があるから紛らわしいのです。私なら「音出し

の準備」とか、「舌放し」という表現を用いたいところです。放す、というのは

舌先がリードの先端から離れることを意味します。

 

まず、どんな音を出すにも準備が必要です。この準備無しでは音を使い分ける事

はできません。

 

今回は音出しの準備として舌の動きについて中心に研究します。

 

音を出す前に準備する事は2つあります。

1.呼吸する事(舌が放れている)

2.舌の準備をする事(舌が閉じている)

 

そして、

3.舌が放れて息がリードを通れば音が完成します。

 

そして、音の長さはどれくらい舌が放れているか、で決定します。

2での舌が閉じている状態。この状態が音出しの基本です。繰り返しになります

が、舌が閉じている状態というのは、舌がリードの隙間をふさいでいる状態の事

です。そして1で呼吸した息が既にリードに向かって出始めているのですが、舌

が邪魔してリードの穴をふさいでいる状態なのです。この状態から3の舌だけ放

すと、息がリードに流れ込み音が出ます。そして、1.息と2.舌の準備はあっ

という間でできなくてはいけません。

 

あえてその経過を音に表すと、

ハッt(息を取る) ンーーー(息が流れ始めているが舌が閉まっている)

トゥーーー(舌が離れて音が出る)

 

ハッt  ンーーー トゥーーー

 

この音を出す準備、呼吸、息を出し始める、舌の最初のポジションができている

事がオーボエ演奏での音を出すコツです。

 

 

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最後までお付き合い頂きありがとうございました。

どうぞ皆様お元気でお過ごしください。

 


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