バックナンバー:141 2008/5/3


読者の皆様、如何おすごしでしょうか?

 

ゴールデンウィークの天気は上場との事ですから、ご家族で外にお出かけの方

も多いと思います。ここ2,3日好天が続いているドイツでは、寒かった4月

をぶっ飛ばすように新緑が芽を吹き出しました。やっと訪れた春で、薄着にな

った女性達が美しく見えてきます。地味なオーバーやコートを着込んでいるよ

りずっと華やかであでやかです。ただ、時々目が痒くなります。完璧な花粉症

ですね、これは。

 

日本でも報道があったと思いますが、オーストリアで24年もの間自分の娘を

地下に監禁し7人の子供を生ませていた男が捕まりました。ドイツのテレビニ

ュースではここ2、3日、この話題で持ちきりです。日本で起こればテレビ局、

新聞、週刊誌関係はこれ以外にニュースが無いほどの報道をするかもしれませ

ん。ドイツの報道の焦点は、その男の事よりも、どうして今まで発覚せずにい

たのか? コントロールシステムはどうなっているのか? 警察や町の福祉関

係者に落ち度は無かったのか?に向いています。この事実を教訓に更に良いシ

ステムを目指すということには関心しますが、気違い一人にそんなに引っ掻き

回される事はニュースを見ているものにとっては心外です。

 

ドイツのナショナルスポーツ、サッカーは、ドイツ国内のブンデス・リーグ、

ヨーロッパの最優秀チームを競うチャンピオンリーグ、ヨーロッパ第2のリー

グUEFAカップの最終ラウンドを迎え、どの試合も緊迫しています。6月に

はスイスとオーストリアが会場国になりヨーロッパ・マイスター(EM)が行

なわれます。ドイツが参戦している試合がある時はアウトバーンを散歩できる

くらい、車の数が少なくなります。日本の相撲の千秋楽で、あるいはプロ野球

の決勝をきめる試合でも、交通量や人の波が少なくなる、と感じるほどの観戦

熱は日本ではありませんから、やはりドイツ、ヨーロッパ、南米のサッカーに

対するファンの熱狂振りは尋常ではありません。

 

今年の夏の私の予定ですが、東京と浜松で講習会を開く事になりました。

 

浜松オーボエクリニックの内容は次のホームページで詳細をご確認ください。

<オーボエネットワーク浜松>

http://www.hamq.jp/stdB.cfm?i=NB26772&pn=11&s=3922

たくさんの方々のご参加をお待ち申し上げております。

 

東京での講習会は7月12日(土)、13日(日)を予定しております。

 

演奏の方は7月19日に渋谷でサロンコンサートを計画しております。こちら

も詳細が決まり次第お知らせ申し上げます。

 

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■ ♪第3回浜松オーボエクリニックのご案内♪

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夏休み中に浜松で行なわれるオーボエクリニックのご案内申し上げます。

中高生のグループレッスンからどなたでもご参加いただける個人レッスン、昨

年ご好評を頂きました伏見さんのリード講習会も行なわれます。

 

日 時:平成20年8月16日(土)、17日(日)

場 所:アクトシティ浜松研修交流センター、31・32音楽セミナー室

 

講師 : 末政圭志、伏見聡子 

 

詳細 オーボエネットワーク浜松

http://www.hamq.jp/stdB.cfm?i=NB26772&pn=11&s=3922

 

予約&お問い合わせ:宮地まで(Tel.080−6964−8442)

 

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■ アルフレッド・ブレンデル(77歳)引退演奏会

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ピアニスト、アルフレッド・ブレンデルが今年の12月にウィーンで最後の演

奏会をするそうです。特に体調が悪くなったから、という事ではないそうです

が、既に2年前に考えた時に、回りの人から止められ、自分でももう少しやろ

う、と言い聞かせて現在に至ったそうです。ドイツの新聞「ツァイト」のイン

タビューから興味深かった部分を抜粋してみました。

 

最近のプログラムでは、かなり体力を必要とする曲は意識的にはずしてきてお

り(例えば、ベートーヴェンのハンマークラヴィァソナタ、シューベルトのさ

すらい人ソナタ、リストの作品、ブラームスの2曲のピアノ協奏曲など)そう

いう体力的な限界を超えない曲を選んでいたそうです。若い頃はこのような曲

を充分演奏しましたから、今は別の曲を演奏しています。15年前に左手の腕

が問題で何ヶ月か休んだ事がありました。それからは体勢を変えて演奏してい

ます。本当は、今日の演奏会が最後でした、と事後通告にしたかったらしいで

すが、回りが黙っていなかったようです。

 

最後の演奏会はウィーンフィルハーモニーとの共演。指揮者はチャールス・マ

ッカラス(82歳)曲はモーツアルト作曲ピアノ協奏曲「ジュェネオメ」?

Jeunehomme−Klavierkonzert

「時代と共に題名は消えてしまいましたが、モーツアルトがある女性の為に書

いた作品です。その女性はジェネミーという名前でした。フランス人でピアノ

が大変達者だったようです。彼女は当時有名なバレリーナ、ジェーン・ジョル

ジェス・ノヴェレの娘でした。彼女が美人であったかどうかは知りませんが、

モーツアルトは大きなインスピレーションがあったようで、この曲によりはモ

ーツアルトの作品の質が格段に向上しています。

 

フランス人ピアニスト、フランソワーレネ・ダッチャブルが数年前にやはり引

退した時に彼のグランドピアノをヘリコプターで海に沈めたそうですが、こう

いう引退をどうお考えですか、という記者の質問に「それが質の悪いグランド

ピアノだったら良かったのですが・・・」とユーモアに答えています。

 

引退により何か失う物は?

 

「アドリナリン、物理的に筋肉や神経の痛みを忘れさせてくれていました。こ

れからは他の仕事でその痛みと付き合うことになります。ただ私は演奏を引退

するだけで生きる事を止めるわけではありません。2009年の夏には講習会、

ゼミナール、講義などの予定が入っています。」

 

もし一つだけ願いが叶うとしたら?

 

「コンサート会場で咳がなくなること。」

 

最後のコンサートに死者も呼べるとしたら誰を招待したいですか?

 

シェークスピア、顔を見た事もないし、どんな風に喋るのか、どんな感じの人

間か接してみたい。

モーツアルト、どんな態度なのか興味がある。

エドワード・レアーとルイス・キャロル、イギリスのナンセンス作家。

ダニイル・チャームス、ロシアのナンセンス作家。

ロベルト・ムスリ、モンス・デシデリオ、イタリアの画家、モードデザイナー。

ギネーブラ・ディ・ベンシ、天文学者でレオナルド・ダ・ビンチが描いた。一

番美しいと思う女性肖像画。ひょっとしたらレオナルドも連れてきてくれるか

も・・・。

エドワード・ゴーレイ、アメリカの作家、風刺画家。

イザイア・ベルリン、私の親友。

 

教育分野に話が言及し、こんな事を言っています。ヴァイオリンの分野では現

在すばらしい若い奏者を排出しています。リザ・バティアシビリ(オーボエ奏

者フランソワ・ルルーの奥さん?)、ユリア・フィッシャー、アラベラ・シュ

タインバッハー、ヴィヴィアン・ハーグナー、ヒラリー・ハーン、ヤニーネ・

ヤンセンなど。ロシアの弦楽器の奏法が良い、とかニューヨークのドロテア・

デュレイの教育がすばらしかったのかもしれませんが、兎に角彼らは音楽を弾

いています。若い世代のピアニストの方は自己主張が表に出すぎ、ベートーヴ

ェンやモーツアルトの協奏曲を弾ける人がいません。でも、これからはピアノ

の世界でもだんだんと変わってくると思います。私が注目している若者は15

歳の少年でピアノも弾くし作曲もする。5つのボールでお手玉ができるし、数

学も得意です。キム・アームストロングというお母さんが台湾人でロンドンに

住んでいます。バッハを弾かせると自然で、全ての声部がコントールされてい

て、健全なリズムと流れが音楽を邪魔しません。彼のマネージャーは直ぐにで

も売り出したいようですが、私がまだ彼がちやほやされるのを押しとどめてい

ます。彼の弾く音楽はテクニックに裏打ちされていますが、ヴィルトゥオーゾ

というのではありません。彼はモーツアルトの全てのピアノソナタを知ってい

るし、バッハなどの背景も知っています。彼が他の優秀なピアニストと違う事

は非常に理解が速い事、普通の人間の4倍も5倍もの明晰な頭脳の持ち主で、

彼と接しているとモーツアルトやシューベルトの頭の構造がどうであったのか

が分かるような気がします。彼に「君はどんな本を読んでいるの?忙しいから

本を読む暇が無いのでは?」と聞いたら答えは、「I read fast」

だったそうです。

 

現代のピアニストでブレンデルの後を継いで行く人は、という問いに対しては、

ピエール・ローランド・アイマードを挙げています。彼は私の友人でもあり、

20世紀の作品に関してはすばらしいです。現在彼は古い作品に取り組み、レ

パートリーを拡張中です。ドイツでは知られていませんが若手ではティル・フ

ェルナー、パウル・ルイスが優秀です。

 

確かまだブレンデルはドイツ中を演奏旅行しているはずです。

 

http://www.welt.de/kultur/article1952319/Der_lange_Abschied_des_Alfred_Brendel

 

.html?nr=1&pbpnr=0

http://www.zeit.de/2008/19/Brendel-Interview?page=2

 

 

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■ インフレ進行、でもドイツは好景気?   

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ドイツ政府の発表の3月の物価上昇が1994年依頼最高値を示しました。去

年の3月と比較し平均3,1パーセント、2月と比較しても0,5パーセントの

物価上昇。一番物価の上昇が激しいのがエネルギーで、ガソリン(スーパー)

は去年の3月から9,6パーセント、ディーゼル19,5パーセント、灯油40

パーセント、電気代7,2パーセントの上昇。エネルギーの上昇を考慮しなけれ

ば平均2,3パーセントの上昇に収まるそうです。しかし現在世界的に食料品の

値上がりが問題になっており、ドイツでも食料品の値上がり率は平均8,2パー

セント。その中で乳製品と卵は23,9パーセント、食用油15,9パーセント、

果物9パーセント、穀物とパンは8,7パーセント、ミネラルヴォーターとジュ

ース類7,1パーセントの上昇となっています。

 

不良債権問題で未だに揺れ動くアメリカ金融業界、そして景気を高揚させるた

めに公定歩合の引き下げを非常に速いテンポで行なってきた中央銀行ですが、

インフレの数字がはっきり出てくると公定歩合の引き下げが難しくなります。

ヨーロッパ中央銀行はインフレ率を押し上げているのは投機的な原油価格で、

それさえ収まればたいして問題は無い、との見解のようですが、後進国の工業

化が進むと平行して原油価格や鉄鋼などの資源の需要は増える一方です。

 

このようにインフレが進み物価高になっているのですが、ドイツ人の購買力は

衰えていないらしいです。失業率の低下と労使交渉で値上げされてた賃金が消

費につながっている、という理由だそうです。質実剛健、他の言葉で言いかえ

るとケチなドイツ人の気質が変わってきているようです。

 

この文を書いた後、アメリカのフェデラルバンクは公定歩合を引き下げました。

今後も必要があれば引き下げを実施するそうですから、インフレの方は原油価

格さえ収まれば問題ない?と考えているのか、原油価格に対して対策があるの

か、対策を講じるつもりなのか? 考えているうちに原油価格が下がり始めま

した。また、インフレにより公定歩合の引き下げが終わりということであれば、

これからまた徐々にドルのグリーンバックが考えられます。

 

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■ バッハ(1685−1750)の作品が見つかる           

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今まで知られていなかったバッハの作品が偶然発見されました。

 

この作品は今まで5小節だけ知られていたバッハ作曲のコラールのテーマにバ

ッハ自身によりオルガン用に編曲されたものだそうです。このコラール・ファ

ンタジーはハレ大学のヘンデルを研究している音楽学者により偶然発見されま

した。学者に説によると6分くらいのこの曲はライプチッヒにあるトーマス教

会のオルガン奏者ヴィルヘルム・ルスト(1822−1892)の1877年

が手書きで残しており、バッハが1705年から1710年ごろに作曲した作

品だそうです。

 

ルストはオーボエとハープの為に素敵な作品を残してくれています。作曲家、

音楽教師、オルガン奏者として活躍したルストは1880年からライピチッヒ

にあるトーマス教会に就任。仕事にはバッハの作品の収集も含まれており、1

858年に26巻からなる最初のバッハ全集を監修しています。

 

http://www.welt.de/kultur/article1904602/.html#reqNL

 

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■ ソマリア沖の海賊(その2)

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先回のメールマガジンでフランスの豪華クルーザーがソマリア沖で海賊に拿捕

(だほ)された事をお伝えしました。フランス政府が犯人と交渉して身代金を

出し、無事クルーと船は戻ってきました。

 

ところが今度はスペインの漁船がまた捕まりました。その後、日本のタンカー

が襲撃にあっています。日本のタンカーはSOSを発信し、会場警備に当たっ

ていたドイツ海軍がヘリコプターと軍艦を派遣。到着した時には犯人は逃走し

た後だったそうです。タンカーには銃撃された痕跡が残っていた、とドイツの

テレビニュースが伝えていました。

 

 


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