バックナンバー:120 2007/5/1


読者の皆様、

 

お元気お過ごしでしょうか?

 

ドイツでは好天が続いております。一時30度もありましたが、現在は気温

の方は20度あたりで快適です。ただ、雨が降らず、日本言う「異常乾燥注

意報」が出ており、消防署はドイツ人が大好きなバーベキューによる火災発

生に神経を尖らせています。農家は雨を待っているでしょうね!

 

仏大統領選は保守派サルコジと、革新派ロワイヤル女史との決戦投票が6日

に行われます。

 

ドイツの景気は好調で、政府発表の今年の経済成長率は1,7パーセントから

,3パーセントに上方修正。来年度は2,4パーセントの成長率が見込まれ

ているそうです。

 

ロストロポーヴィッチ死亡。カザルスと共に20世紀のチェロ界をリードし

た大巨匠。ご冥福をお祈りいたします。

 

 

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■ アルプスの人口雪が自然破壊に!                     

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4月17日ヴィーンでの学会で、アルプスでの人口雪の影響で水の量が少な

くなっている、という発表がありました。人口雪を降らせる為に地下水を吸

い上げていますが、夏の川へ流れ込む水量が減り、ラフティングなどの夏の

アトラクションにも影響しそう、という事です。

http://www.handelsblatt.com/news/default_203116_1255693.aspx

 

 

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■ 南ドイツではダニにご用心

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バイエルン州、バーデンヴュルテンブルク州, ヘッセン州の全域がダニの危

険区域に指定されました。これは暖冬によるダニの異常発生による措置です。

ダニによる障害は脳炎です。夏に南ドイツ、オーストリア、北イタリアでバ

カンスを計画している方は是非予防注射を検討することをお勧めいたします。

我々も以前、チロルへ出かけた時に予防注射をした事があります。1週間く

らい間を置いて、2回注射しました。ですから、遅くとも旅行前10日くら

いには1回目の注射を済ませておく必要があります。

http://www.handelsblatt.com/news/default_203116_1254747.aspx

 

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■ 4月15日 ハンブルク放送交響楽団演奏会 ゲリンガース

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急にハンブルクへ演奏会を聞きに行ってまいりました。レイス・ハレ(Laei

szhalle)昔はムジーク・ハレと呼ばれていた演奏会場です。レイスというの

は人の名で、このホールの建設費を兄弟で出資した、その人ちなんでこの名

前がつけられたようです。このホールの正面から大ホールに入ると真正面の

階段の所にレイツの記念碑が壁に埋め込まれています。

 

この日のプログラムは

ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番

ショスタコーヴィッチ チェロ協奏曲第2番ト短調

シベリウス 交響曲第1番

ソリスト ダビッド・ゲリンガース

指揮   エリアフ・インバル

 

この日のプログラムと曲目解説はドイツ語ですが

http://www1.ndr.de/container/ndr_style_file_default/0,2300,OID3813568,00.pdf

 

オーケストラのホームページは

http://www1.ndr.de/ndr_pages_std/0,2570,SPM1134,00.html

 

さて、この日の私のお目当てはソリストのゲリンガースでした。

ゲリンガースはロストロポーヴィッチの弟子で1970年度チャイコフスキ

ーコンクール第1位金賞を受賞。現在ベルリン音楽大学で教鞭をとっており

ます。ドイツがチェロのレベルを世界第1級に保っていられるのはこの人が

いるから、と言っても過言ではありません。実際、彼の弟子たちは数々のイ

ンターナショナルなコンクールに入賞を収め、ソリストとして大活躍してい

ます。5月の我々の定期にも彼の弟子がソリストで登場します。ゲリンガー

ス自身も世界的にソリストとして飛び歩いていますから、一度は生で聞いて

見たかった人だったのです。本当はこの日、ソリストとしてザルツブルク音

楽院のチェロの教授、ハインリッヒ・シフが弾く予定でしたが、病気で変更

となり、ゲリンガースが登場となりました。

 

先回のメールマガジンで19日のアルブレヒト・マイヤーのコンサートを確

認する為にレイス・ハレのホームページを開いたら、今回の変更を偶然知り

演奏会に出かける事にしたわけです。

 

ソリスト変更に関する掲載はドイツ語ですが

http://www1.ndr.de/container/ndr_style_file_default/0,2300,OID3846878,00.pdf

 

演奏会場に予定通り到着し、当日券を買おうと窓口に行きかけた瞬間に一人

のご婦人が声を掛けてくださいました。1枚チケットがあまっているので買

ってくれないか、と言うのでチケットを見せてもらうと、真正面の1階の中

央だったので、15ユーロで買い取りました。回りは定期会員の方々ばかり

で、見慣れない東洋人の私が座っていると、曲の合間に「如何ですか?」と

か、演奏会が終了してから「御気に召しましたか?」と話しかけられました。

 

さて、ソリストにも期待していましたが、当然オーケストラにも期待を持っ

ています。プロの私が期待を持って演奏会に行き、その期待通りの演奏をし

てくれれば大満足です。もし、期待以上の演奏が聴ければ私の演奏にも多少

なりに影響力を持つことになると思います。

 

さて、第1曲目のベートーヴェンのレオノーレ序曲です。思うに、ハンス・

シュミット・イッセルシュテット(戦後あたりにこのオーケストラに大変貢

献したドイツきっての名指揮者)からの伝統が染み付いているような、本当

にオーケストラのレパートリーになっている曲であることがよく分かる、涙

が出そうになるくらいの名演奏でした。8プルトのファースト・ヴァイオリ

ン、7プルトのセカンド・ヴァイオリン、6プルトのヴィオラ、5プルトの

チェロ、4プルトのコントラバスという大編成の弦楽グループが、無理なく

且つ積極的に出してくる音色には目をみはるものがありました。

 

期待していたゲリンガースの演奏は、低音から高音まで、しなやかな弾力の

ある、つやのある音色に完璧なテクニック。表現も非常に繊細で、隅々まで

完璧にコントロールが行き渡っています。ショスタコーヴィッチの協奏曲は

オーケストラにとっても難曲です。3本のファゴットと2本のホルンの見事

なソリ、パーカッションの素晴らしいアンサンブルに支えられて、緊張感が

会場に張り詰めていました。

 

アンコールに演奏したのはハイポジションからピアニッシモのトリルで始ま

り、そのままクレッシェンドしながらグリッサンドで下りてくる現代曲。

ショスタコーヴィッチでもそうでしたが、完璧な音程でのドッペル・グリフ

(重音奏法)がここでも功を奏し、演奏しながらファルセットで声を重ね合

わせた絶妙な、普通ではあり得ない響きに、会場全体が息を呑みました。こ

の作曲者はゲリンガースの出身であるリトアニアの人で、名前をヴァスクス

(Pēteris Vasks)と言うそうです。

 

前半がもちろん指揮者の腕もあったと思うのですが、オーケストラの十八番

のベートヴェンとショスタコーヴィッチではオーケストラとソリストの名演

が主体でした。

 

後半は指揮者のコントロールが物を言うシベリウスです。オーボエ奏者にと

っては2番の交響曲の方が活躍します。でも私はこの1番の交響曲が実は大

好きなのです。何と言えば良いでしょうか、パッサカリア風、と言えばよい

のでしょうか。兎に角次々にテーマがあちらこちらのパートに出てきて曲が

構成されていますから、その部分部分と全体がマッチしないと曲が生きてこ

ず、流れも出ないで自滅するケースがあるのがこの曲です。指揮者インバル

は宮本さんがフランクフルト放送管弦楽団時代の常任指揮者だったはずです。

このインバルの前の常任指揮者ディーン・ディクソンという人がおり、この

第1番の交響曲は、彼が最後のフランクフルトでのオーケストラ定期演奏会

でメインに組んだ曲です。京都芸大時代にこの録音を耳にし、感激したのを

いまだに覚えております。

 

大オーケストラのすばらしい響きには前半と変化はありません。ヤマハオー

ボエ・プレイヤーのファン・デア・メルベは、積極的です。この曲で非常に

重要なソロ・クラリネットはドイツ的な独特の柔らかい響きです。ファゴッ

トも太くよく響いています。金管の響きはゆったりとしていてバランスも素

晴らしいです。ですから悪い演奏にはなるはずはないのですが、この曲は統

制がとれてないと名演奏にはならないのです。まったく統制が取れてないわ

けではないのですが、行き渡っていなかった。或いは昔のフランクフルトの

指揮者の名演が今でも頭にあるから、ちょっと違うなあ、という気がしまし

た。

 

しかし、この日は本当にオーケストラの音色を、堪能できました。今回長々

とこの日の演奏会の事を書いたのは、もし、皆さんがゲリンガースの演奏を

今まで耳にされていらっしゃらなかったら、是非生をお聞きになられること

をお勧めいたしたい、と思ったからです。

 

 

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■ エリツインの死 4月23日   

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エリツインは現在のロシアの立役者です。旧ソビエトからロシアへの改革を

始めたゴルバチョフに共産党が革命を起こしました。それを無事終了させ、

改革路線を進めたのがエリツインでした。当時ドイツはコールが首相で、こ

の2人はサウナ外交を進め、この時からドイツのロシアよりの外交が進めら

れていました。ぼろぼろだったソ連時代から脱出しかけていたロシアで、そ

の頃、日本が北方領土を買い取っていれば、海域問題、資源問題は別の展開

があったはずです。こういうチャンスを逃したのは大変残念でしたが、今は

中国に日本の領土を乗っ取られないように、しっかり守り抜かないと、一度

取られたら取り返すのがどれほど大変か、政府はよく自覚して対処してもら

いたいと希望します。

 

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■ Gliese 581

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地球に似た星があることを天文学者が確認しました。温度は0-40度C。水が

ある可能性が高いそうです。20光年離れたこの星は別の太陽系に存在し、我

々の地球の1.5倍の大きさだそうです。星の名前は「Gliese 581」だそうです。

 

一昔前は、帆船で新大陸を探すのが夢の世界でした。これからは太陽系の外に

人間が住める場所を探すのが夢の世界になりそうですね!

 

 


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