バックナンバー:115 2007/2/15


読者の皆様、

 

お元気お過ごしでしょうか?

 

先日、ハンブルク音楽大学に在籍しているオーボエの学生さんの卒業試験を

聴いてまいりました。日本の大学を卒業され、ドイツに留学され、卒業試験。

私も25年前に経験したことです。残念ながらあっちこっちの音楽大学のオ

ーボエの卒業試験を聴いて回ることはできませんが、公開で演奏会形式で行

われるドイツの音楽大学の卒業試験はプロの演奏会に劣らず聴きごたえがあ

ります。

 

この日のプログラムはエマヌエル・バッハのソナタ。モーツアルトのオーボ

エ四重奏。ドラティのディオ・コンチェルタンテでした。

 

E.バッハは大バッハの息子で、彼の異名は「驚きのバッハ」。奇抜なアイ

デアの持ち主で、それを生かした演奏が要求されます。この日の演奏はその

意表をついた解釈が素晴らしかったです。また、ドラティですが、ラベルが

作曲したら、このような響きになるのでは、と想像される場所があり、テク

ニック的にはひょっとしたらデュティユより難しいかもしれません。私はま

だ挑戦した事がない曲で詳しいことは申し上げらないのですが、いつか取り

上げて見たいと思う曲でした。ドラティはハンガリー人で作曲家としてはコ

ダーイの弟子です。しかし指揮者としての方が有名です。この曲を2002

年のミュンヘンコンクールでの入賞者コンサートで井上さんが演奏していま

す。

 

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■ 最近のヨーロッパのニュースから 「殺人」「G7」

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先回のメールマガジンを発行してから、ヨーロッパでは人が死ぬ事件が多く

発生しています。イタリアのサッカーリーグでファンが暴動を起こし警察官

一人が死亡。またしてもイタリアですが、彼女に振られた男が彼女と友達の

女性に暴行を加え生きたまま地下に埋めてしまい、本人は救出され、友達は

死亡。北ドイツでは中華レストランを経営するアジア人七名が射殺され、中

国のマフィアの仕業では、と警察は捜査中。イラクではドイツ人がまた誘拐

された模様で、ドイツ外務省は救出に手を尽くしている模様。

 

G7では日本が期待していた円の価値回復に関しては討議されず、投資の規

模が大きくリスクの高いヘッジファンドへの警鐘。それからイランに対する

アメリカへの軍事姿勢への批判が強く出されました。2月24日には国連安

保理からのイランに対する核使用廃止要求の期限が切れる為、各国の外交は

利害をめぐってしのぎを削っています。日本円に関してですが、21年前の

1985年の水準だそうです。でも私がドイツに来た当時はマルクがもっと

強かったです。1マルクがほぼ100円でした。現在のレートで0.5ユーロで

(ほぼ1マルク)78.92円しかもらえません。経済関係筋によりますと、

円安基調はまだ続くそうです。原因は„Carry Trades“といわれています。要

するに利子の安い日本円から高利子の他の通過にシフトしている人が多い、

ということだそうです。その人たちが円に戻ってこない限り、円は売られる

傾向が続く、つまり円安が続くという事らしいです。

 

中東の行方が難しいのに対して、6カ国協議で原油と引き換えに北朝鮮が核

を削減する方向で一致。これがリップサービスだけでなければ一応アジアの

非常事態は回避。残るは北朝鮮に関しては拉致問題の収拾、中国に関しては

以前軍事問題が日米、台湾にとっての脅威となって残っています。

 

 

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■ 南太平洋の海豚

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ハンブルクの雑誌「Mare(海)60号」に南太平洋の島トンガでの野生の

豚の記事がありました。この豚は浜の海草や貝、蟹などを食べ始めたそうです。

お腹まで海水につかり魚を採ることも始めたそうです。ハノーファーの動物医

大のミヒャエル・ベント教授によると、家畜の豚は普通自分からは泳がないが、

根本的には豚は泳げる、と語っています。現地の人は海で魚を採って食べた豚

はそうでない豚と比べて味が良いと人気があるそうですが・・・。

 

そういえば、ドイツ語で海豚「Seeschwein」(ゼー・シュバイン)

があったっけ!

http://de.wikipedia.org/wiki/Dugong

 

ついでにアザラシはドイツ語で海犬「Seehund」(ゼー・フント)とい

います。

http://de.wikipedia.org/wiki/Seehund

 

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■ 紀元前12万年の石器時代の遺跡          

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現在カーニバルで賑わっているドイツのラインランド地方(ケルン・デュッセ

ルドルフが中心)の炭鉱の町、インデン・アルトドルフというところがありま

す。

http://de.wikipedia.org/wiki/Inden_(Rheinland)

 

デュッセルドルフの近くにはネアンデルタールという場所があります。世界史

の授業を思い起こしていただけば、猿人として人間の発祥として習ったあの有

名なネアンデルタール人が発見されたのは、ここです。ですから、このライン

地方は古い遺跡がまた発見されてもおかしくない場所ではあります。

 

2005年12月にインデンで紀元前12万年頃の家の一部が発見されました。

その後インデタール(タールはドイツ語で「谷」という意味、ネアンデル・タ

ールは従ってネアンデル谷という事)で3万トンの層を取り除き3千平米にわ

たり発掘が続けられました。この発掘では住居の跡、キャンプの跡、600品

以上の石器や当時のごみが発見されました。当時の気候は南国のような気候だ

ったようで、住居はたぶん木製のくいに皮をかけた感じであったであろうと想

像されています。たぶん沢山のグループがネアンデルタールから狩りに出てこ

の地に移り住んできたのでは、と想定されているようです。

http://onnachrichten.t-online.de/c/10/29/58/36/10295836.html

 

今、この場所は炭鉱でしたので、土を掘る機械は揃っていたので、発掘作業は

かなり順調だったようです。

http://de.wikipedia.org/wiki/Bild:TagebauInden.jpg

 

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■ EUの環境整備政策   

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EUの環境整備政策の一環として、輸送燃料の温室効果ガスを2011年以降

2020年までに10%削減する事に決定しました。この決定により、車から排

気される二酸化炭素の排気量に関して、ドイツの車産業界では最新技術の早期

導入を強いられる事となりました。

 

このテーマになりますと、世界中で日本のトヨタがハイ・ブリット・エンジン

でリードしており、はじめは笑っていたドイツ自動車産業界では顔色が変わっ

てきています。ドイツでの省エネの筆頭はディーゼル車で、ラプス・ディーゼ

ル(穀物から作られるエネルギー)またはエタノールを混ぜる計画が進んでい

ます。

 

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■ ワインの栓

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ヨーロッパでの代表的な飲み物はビールとワインです。

 

イタリアのバイオ・テクノロジー会社・オリバー・オガールが今まで一般的に

使用されていたワインのコルク栓に変わるプラスティックの栓を開発したよう

です。この新しい栓の名を「コルケット」と呼ぶそうです。5年間、ウディー

ネ大学との共同開発の結果、このコルケットはコルクが持つ「ワインに呼吸さ

せる」性質が備わっており、コルクのように臭くなく、カビも生えないそうで

す。

 

これから2種類のコルケットを市場に出すそうです。その一つはコルケット・

ブルーで、2年までで飲みきってしまう為の栓。もう一つがコルケット・プロ

で、2〜5年まで保存できるワインに使用する栓、だそうです。

 

私は、新酒より、寝かしたワインが好きなので、ワインの当たり年、となると

多めに買い込んで地下に寝かしておきます。もちろん、どんなワインでも置い

ておけば良い、というものではなく、寝かしておくのに適したワインがあるわ

けです。

 

30年くらい寝かしたワインのコルク栓は非常にもろくなっており、栓を抜く

のが難しいです。専用のコルク抜きでゆっくりコルクを引き上げますが、途中

でコルクが分断され、コルク栓の下の部分が瓶に詰まったまま、ということが

よく起こります。こういうことがない様にコルク抜きを深く刺しすぎると、コ

ルクが貫通してコルクの粉がワインに混入してしまいます。若いワインであれ

ばコルクも新しく粉の出る事は少ないのですが、かろうじて体裁を整え、用を

なしていた古いコルクはもろく、粉どころか分解してしまう恐れさえあります。

 

もちろん、もっと長く保存する為には、この古いコルクを取り替える道具もあ

るのですが、残念ながら私はその道具を持っていません。

 

レストランでワインを注文すると、ソムリエがワインを空け、最初に注文主に

ワインを注ぎます。注文主がワインをテースティングしてから、お客様に注ぎ

ます。最初にお客様にワインをお注ぎしないのは、ワインの品質を確認してか

らお客様にお勧めする為だけではなく、このコルク栓の粉がお客様のグラスに

入らないための配慮なのです。

 

もし、高級レストランであなたが20年くらいたったフランスの最高級赤ワイ

ンを注文すると、デカンタという作業をソムリエが行います。デカンタとは、

本来のワインの瓶から、別のワインの壷にワインをゆっくりゆっくり注ぎかえ

る作業です。これは抜栓してからワインを万遍なく空気に触れさせる為です。

長い間ゆっくり瓶に眠っていたワインは香りと味が閉じこもっています。空気

にゆっくりと触れさせ、30分くらい置いておきますとブランデーのような香

りがしてくるのです。こういったワインはデカンタ作業の後しばらく時間が必

要な為、食事と共に注文します。前菜の時には他の軽いワイン、あるいは食前

酒を飲みます。主食が出る頃に最高級ワインは飲み頃になっている、というわ

けです。

 

この種の赤ワインの色は若い時のワインの赤ブドウ色とは異なり、褐色からコ

ーヒーのような濃い色になってきます。白ワインの場合は薄い黄色だった液体

が、濃い金色からキャラメルのような色に変化しています。

 

 


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