バックナンバー:102 2006/6/1


読者の皆様、

 

お元気でお過ごしでしょうか?

 

先回のメールマガジンでドイツは夏です、でも、これでもう夏は終わりかも、

とドイツ人達が噂している、と書きました。現在、南ドイツでは標高800メ

ートル以上の場所で雪。北ドイツでもセーターを着込んでいます。

 

そんな中、ドイツ在住の日本人達に寒さをぶっ飛ばしてくれたのが、W杯の為

のテスト試合、5月30日に行われた対ドイツ戦です。日本の皆様もご存知か

と思いますが、途中まで2−0で日本がリードしていました。最後に日本チー

ムの攻撃のパスミスでドイツに反撃されてしまいました。ドイツ・チームにと

ってはこのミスが救いで、大事なこの試合を落とすようなことになれば、マス

コミは一斉にドイツチームをたたいていたことでしょう。

 

この日、火曜日はオーケストラの定期演奏会がありました。

 

出し物は、ファリャ作曲「三角帽子」から3曲、ピアッツォーラ作曲バンドネ

オン協奏曲、シューベルト作曲「グレート」。演奏会が修了して歌劇場を出た

時はまだ0−0。家に着いたら2−0で日本が既にリード。テレビで観戦でき

てからはドイツが2点入れ、引き分けに持ち込まれてしまいました。6月9日

からはW杯の為に我々の演奏するテンポが速くなったりして・・・・・・。

 
 

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■ 演奏会のお知らせ 曲目解説

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演奏会の詳細はホームページをご覧下さい。

http://www.oboeinfo.de/

 

メールマガジンとホームページをご覧になってこの演奏会のチケットをお申し

込み先着50名様に、今年発行のドイツか、オーストリアのモーツアルト記念

切手を1枚プレゼントいたします。(チケット1枚につき切手1枚)どちらの

切手がついてくるかは運ですね!

 

日時 7月14日 19時開演

場所 かなっくホール(東神奈川駅より徒歩3分)

http://kanack-hall.jp/

出演 末政圭志(オーボエ)、酒井秀明(フルート)土山美紀(ファゴット)

   森園康一(コントラバス)、末政由美子(チェンバロ)

プログラム ビバルディ、スカルラッティ、テレマン、レクレア、門田、ヤニ

チの室内楽曲

入場料 4000円

お問い合わせ 増本博子

 

 

 

演奏曲目について

 

人生1人で過ごしても面白くありません。音楽も息の合った仲間と演奏するの

が楽しいです。という訳で今回も室内楽をお届けいたします。プログラムには

それぞれの楽器が活躍できるよう配慮し、オーボエだけではなく、フルート、

ファゴット、コントラバス、チェンバロの魅力もたっぷりとお楽しみ頂けるプ

ログラム構成です。

 

 

ヴィバルディ(1678〜1741)はヴェニスに生まれました。ヴァイオリ

ン奏者兼作曲家である彼はヴェニスの孤児の為の音楽学校教師をしていまいた。

彼はその学生の為に大変多くの器楽曲を書きました。学生が本当に演奏できた

のだろうか、と疑いたくなるほどヴィルトゥオーゾな作品が多く、当時のイタ

リアの音楽のレベルの高さが分かります。フルートが大活躍するソナタでは、

酒井君の名演が楽しみですね。

 

ドメニコ・スカルラッティ(1685〜1757)は、はじめ有名な父アレッ

サンドロ・スカルラッティの影の存在でしたが、1720年にスペイン宮廷に

仕えるためイタリアを去って以来、鍵盤楽器のすばらしい作品を作って成功し

ています。有名な555曲のソナタは光り輝く変化に富んだ個性的な商品です

が、そのほとんど半分以上が67歳から72歳の間に書かれています。残念な

がらこれらの曲は時としてバロックのエチュードのように扱われ、その魅力が

その魅力をそこなわれやすいこともしばしばあります。特にゆっくりとしたソ

ナタでは響きとハーモニーの達人であったことを見事に証明しています。

 

テレマン(1681〜1767)音楽は独学で勉強し、法学で入ったライプチ

ッヒの大学を中退。当時主流を成していた対位法の音楽を好まず、旋律を重視

した器楽曲をたくさん残しています。ハンブルクでの作品、「食卓の音楽」の

注文販売にはロンドンから4歳年下のヘンデルの名前も記載されていました。

ヘンデルはこの「食卓の音楽」からいろいろな部分を取り自分の作品に使って

いる、ということです。当時は著作権のような知的財産の観念は無かったよう

でした。むしろ、その作品を使用することにより、作曲家に敬意が払われてい

た時代だったようです。長生きしたテレマンはバロック音楽から抜け出し、古

典派への先駆けとなった作曲家です。ヘンデルが大変高く評価した「食卓の音

楽」の中からファゴットが大活躍するニ短調の四重奏をお楽しみください。

 

ジャン=マリー・ルクレール(1697〜1764)の非常に美しい旋律を持

ったオーボエ協奏曲をご存知の方もいらっしゃると思います。ヴァイオリン奏

者の彼はルイ14世から王室音楽教師として任命されました。フランスのヴァ

イオリン奏法の先駆者といわれている彼の作品にはヴァイオリンの為の素晴ら

しい作品が多いです。演奏する曲の原曲はヴァイオリンとビオラ・ダ・ガンバ

と通奏低音の為のソナタです。オーボエで演奏するのは音域的に難しい部分が

あり大冒険。ところで、ルクレールの死に関しては未だに謎に包まれています。

階段から突き落とされ(脚を滑らせた事故との見解もあります)、落ちた所の

とんがった物に突き刺さり死亡。当時の警察は他殺事件として捜査しました。

ルクレールと宮廷音楽隊・総監督の地位を争ったのギドンを疑った様ですが、

証拠なし。迷宮入りとなりました。

 

門田展弥さんは私の京都芸大時代のオーボエ課の先輩です。卒業されてから作

曲に転向されました。2004年に京都と福岡でカペラ・ベレメンシスの演奏

会で演奏した「黒田節ファンタジー」は彼の優秀な作品の一つです。今回の編

成での室内楽のプログラムにはコントラバスが活躍する曲がありませんでした

ので、門田さんにお願いしてコントラバスが影に隠れない曲をお願いいたしま

した。7月14日の我々のコンサート以外の門田さんの作品が聞ける演奏会は

次のとおりです。イタリア人クラリネット奏者、マエストロ・インチェンツォ

が演奏いたします。

7月10日(月)午後6時30分、京都池坊学園こころホール

7月16日(日)午後3時、神戸酒心館ホール(以下ホームページ参照)

<A HREF="http://www.shushinkan.co.jp/index.html">神戸酒心館−創業宝暦元年 1751年

清酒福壽醸造元</A>

 

ヤニチ(1708〜1763)は現在のポーランドのシュレージエン地方、

シュバイドニツ生まれ。1736年から死ぬまでフリードリッヒ大王の室内楽

奏者を務めました。彼の作品には三重奏、四重奏などの室内楽が多く、その作

品は当時大変評価が高く、彼の死後20年を経て、ヨハン・ウィルヘルム・ヘ

ルテルが「ヤニチは対位法の名手であり彼の四重奏は今でもこの種の音楽の見

本である。」と表しています。実はこの曲「エコーソナタ」の事は、私が京都

の学生時代に当時ドイツ留学から帰っていらしたばかりのオーボエの先輩から

「良い曲があるよ!」と教えて頂いたのです。30年以上楽譜は持っていたの

ですが、ようやく演奏する事になりました。この他にヤニチにはオーボエ四重

奏があります。こちらも対位法を駆使した名曲です。

 

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■ 旧ユーゴスラビアのモンテネグロが独立       

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旧ユーゴスラビアのモンテネグロは現在のセルビア・モンテネグロから独立し

1つの国となることを国民投票で表明しました。

 

5月21日に投票が行われ、投票率は86パーセント。22日の開票は昼間で

の途中計算だけでも賛成多数とはっきりわかりました。セルビア側も投票結果

を重視して独立を祝う声明を出しており、UEもこれから新しいUEへの参加

国としての受け入れを準備することを発表しています。

 

モンテネグロは人口70万人弱の旧ユーゴスラビアの中でも一番小さい国です。

 

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■ バイエルンのクマ騒動       

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バイエルンにクマ現れました。オーストリアから国境を越えて入ってきて、家

畜を襲撃。バイエルン州は射殺許可を出しました。動物保護団体と猟師が争っ

てこのクマを探し出しましたが、射殺が決まってから「クマ隠れ」。

 

普通、クマは人には近寄らないそうです。もし、山でクマに遭遇したらどうす

るのが得策だと思われますか?

 

死んだふりをする?

 

はずれです。

 

大声で話すか、歌うか、笛を吹く、というのも効果があるそうです。笛、とい

うのもオーボエではありません。ホイッスルの事です。

 

なんか、歌がありましたね!

 

ある日、森の中、くまさんに出会った、・・・・・・。

 

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■ スキー旅行 グリンデルワルト その3       

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4月1日から家族でスキー旅行に出かけました。目的地はグリンデルワルトで

す。グリンデルワルトはスイス中部、ウェルナーオーバーランド地方にある登

山で有名なアイガー北壁のふもとの村です。

 

「もうすぐ夏なのに、スキー旅行記とは!」

 

なんておっしゃらないでお付き合いください。今年の夏休みにスイスに行くあ

なたのお役に立てるかもしれませんから。

 

グリンデルワルト・パート2、をホームページに徐徐にアップしていきます。

写真を掲載しているので、ご興味のある方はご覧下さい。

 

 

 

グルンドにある駐車場

グリンデルワルトを囲んでいるスキー場は大きく分けて2つあります。一つは

フィルスト(First)もう一つはクライネ・シャイデック(Kleine

 Schiedegg)。

 

フィルストのスキー場はグリンデルワルトの村のサンスターホテルの向かい側

から乗れるロープウェイで登れます。そんなに大きなスキーコースではありま

せんから、1日滑れば充分。ただ、アイガーに対峙している山ですので景色の

良いスキー場です。

 

クライネ・シャイデックはお隣のメンリヒェン(M&auml;nnlichen)と繋がっていま

す。この両方のコースをメインに滑ります。スキー場に上がるにはグリンデル

ワルトから登山電車でグルンド(Gurund)を通過しクライネ・シャイデ

ックへ上がるか、グルンドからロープウェイでメンリヒェンに上がるかの方法

があります。電車で上がるにしても、ロープウェイで上がるにしてもグルンド

が拠点になります。

 

我々はグルンドまで車で行き、ロープウェイでメンリヒェンに登り滑り出しま

す。最後はクライネ・シャイデックからブラデックという登山電車の途中駅ま

で滑り降り、そこから電車でグルンドへもどります。メンリヒェンからグリン

デルワルトまで雪があれば滑り降りることも可能です。今回は4月ですがかろ

うじて雪はあり、グルンドまで滑ることは可能だったのですが、雪の状態はあ

まり良くないので滑りませんでした。

 

さて、グルンドには登山電車の駅の前、駅の横、メンリヒェンのロープウェイ

の前に駐車場があります。登山電車の駅とロープウェイとの間隔は歩いて3分

程度。

 

我々はいつも車をロープウェイ前の駐車場に停めてスキーを開始します。車の

屋根にはスキーを格納するジェットバックというのを固定しています。スキー

が終わると、その、スキーの道具は車の屋根に積み込みます。翌日はその格納

庫からスキーを駐車場で降ろせば良い、というきわめて機動的な方法を取って

います。この駐車場は有料です。1日券を機械で購入して車のフロントガラス

の部分に置いておくのです。1日券しか販売しておらず、買う時刻が遅くなれ

ばそれだけお値段も安くなります。この機械、時々おつりが出てきません。で

すからしっかり小銭をご用意しておくことをお勧めいたします。

 

我々がスキーを終えて戻ってくるのはグルンドの登山電車の駅です。列車から

スキーを降ろすと私が車を取りにロープウェイの駐車場まで歩いていきます。

これがスキー靴のままですと結構大変です。そこでリュックサックにサンダル

を突っ込んでおき、サンダルで登山電車の駅からロープウェイ前の駐車場へ向

かいます。

 

スキーをしているあいだ当然サンダルはリュックサックの中ですが・・・・・。

 

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■ ベルリン中央駅

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5月27日にベルリンの中央駅が開通しました。今までの西側の中心で中央駅

の役目を果たしていたのが「ツォー」と呼ばれている駅です。私が1977年

の冬に初めてベルリンに行った時に到着した駅がこの駅でした。夜到着せいた

事もあり、何と暗くて小さく薄気味の悪い駅だろうと思いました。今のツォー

駅は商店街もでき、明るい感じこそ変化していますが、当時は私の記憶では駅

にはお店はありませんでした。ひょっとしたら、キオスクくらいは会ったかも

しれませんが・・・・。

 

ところで、日本でも使われている「キオスク」ですが、実はドイツ語です。小

さなお店「Kiosk」が日本でもそのまま使用されていますね。

 

話をベルリンの駅に戻します。現在はベルリンはドイツの首都。列車の数が増

えツォー駅ではまかないきれなくなり、新しい中央駅が新設されました。便利

だったツォー駅に比べると、新しい中央駅の回りは何もまだ無い、とニュース

で報道されているのを聞き、昔、新博多駅が出来た頃、畑のど真ん中に大きな

新しい博多ステーションビルが建てられ、何でこんな所に、と不評だったこと

を思い出しました。

 

えっ、いつごろのお話ですかって?

 

丁度、東京オリンピックの頃の話です。

 

ベルリンの中央駅の写真は次のページで見ることが出来ます。

http://www.n-tv.de/670425.html

 

このホームページ、時々ご紹介しておりますが、写真で最近の出来事を見る事

ができます。索引が右の方にあり、「ビキニが60年を迎える」なんて記事と

写真があると、ちょっと覗きたくなりますね。1964年にビキニが発表され

ました。当時のモデルはビキニを着けたがらなかったそうで、60年代になり

やっと流行の兆しが見えてきたそうです。その先端を切っていったのがボンド

映画。・・・・・・・。

 

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■ 今が旬(今年もアスパラガス)

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去年の今頃、ドイツのアスパラガスについて書きました。今年もまたアスパラ

ガスの季節です。我が家では、6月24日までの間は機会あるごとに買ってき

ては食することになります。(去年のアスパラガス談義のバックナンバー80

号と81号。丁度同じく5月15日発行のメールマガジンに書いています。)

http://homepage3.nifty.com/~motohasi/oboe/magazine/backNr07/backnr80.htm

http://homepage3.nifty.com/~motohasi/oboe/magazine/backnr08/backnr81.htm

 

新鮮なアスパラガスのゆで方:

 

アスパラガス専用の鍋があります。アスパラガスの頭を上にして縦に入れられ

る網を使うと先が柔らかくなりすぎない、そうです。(まだ、鍋を購入して試

していません)説明だけ読んでいると、頭はゆでる時に水につけないそうです。

 

我が家のゆで方は、塩と砂糖を少量づつ加えてゆでているそうです。

 

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■ 変え指 F (その1)

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読者の方から、Fの変え指についてのご質問を頂きましたので、今回は変え指

Fについて考察してみたいと思います。

 

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末政先生様

こんにちは(または、こんばんは)。

 

次回で100回ですか? すごい努力!、執念? 

まあドイツに何十年も住める先生のことだから当然の結果ですか?

 

このところFの話で持ちきりですが、ちょっとはずれた質問です。

 

私は左Fがない時代(楽器)にオーボエをならったのでフォークFを中心に使

っていますが、知り合いの元プロの方がかなり左Fを多用します。

 

-durから左FですしAs-durなど上がる時はdes-esは右スライドし左

Fへ下がる時は左Fから左Esへガタンと小指を落ちしてつないでいます。

 

私にはうまくいきません。標準的? 多数はどういう指使いなのでしょうか?

 

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結論から先に申し上げますと、あなたの一番吹きやすい指使いを最優先して良

い、とお考え下さい。

 

ドイツのプロで原則的に左Fを使用する奏者がおります。私の記憶に間違いが

なければハンブルク歌劇場のソロ・オーボエ奏者トーマス・ローデがいつも左

Fを使用している、と聞いたことがあります。

 

私が今まで御一緒に演奏したオーボエ奏者の中で、基本的に左Fを使用されて

いる方は彼以外にはいらっしゃいません。皆さん、標準の右Fをお使いになり

ます。

 

さて、ご質問の趣旨は、変え指としてどういう時に左Fを使用し、どういう時

にフォークFを使うか、という使い分けについてです。

 

音符の配列によって残念ながらこの標準の右Fを使用できない時にはどうして

も変え指を使わざるを得なくなります。

 

私もご質問の方と同じように、大学時代はほとんど左Fを使用しておりません

でした。変え指FはすなわちフォークFだったのです。これを無理に左Fにす

るとうまくいくかどうか不安のあまり指が硬直してスムーズに動かなかった経

験があります。そんな怖い思いをしてまでもわざわざ左Fを使いたいと思う時

はあります。特にゆっくりしたソロなどではフォークFでは音がふんわり柔ら

かすぎて他の音とのバランスが取れないことがあります。そういう場合は迷わ

ず左Fを使います。

 

ゆっくりしたパッセージでもフォークFを使用することもあります。フォーク

Fでしか出せない柔らかい音色が必要な時は迷わずフォークFです。特に下の

Fでのピアノ奏法の場合はフォークFは有効です。音程もフォークFの方が右

のEsキーを同時に押してあげる事により高く調整でき融通が利きます。

 

ゆっくりの場合はこのように音楽的な要求に従ってどのFを使用するかの選択

がテクニックの危険を多く伴うことなく可能です。

 

次回は早いパッセージにおけるFの使い分けを考察してみます。

 

 


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