菊池明彦のオーボエの話 - 1 -



この内容はあくまでも私の主観に基づく感想・意見・考え方・感じ方と,若干の事実が混ざっています。

今日のテーマ:オーボエのスタイル

  1. ジャーマンスタイル
  2. フレンチスタイル
  3. アメリカンスタイル
  4. その他
  5. これからのスタイル

OBOEには大きく分けて3種類のスタイルがあるといわれています。
ただ最近はインターナショナルになり、どこにいっても同じ音 なんてことがままあり、ちがうぞ!ということがあるかもしれませんがあくまで私の主観です。
(でも以前は一般的に言われていたことだと思っているのですが)



1.ジャーマンスタイル
これはいわずもながドイツを中心とするスタイルで基本的には重く太い音色が一般的です。ただ北ドイツと南ドイツでは違いがあり北は太く、暗い音色が特徴的です。(何たって寒いもんね)また南は明るいのが特徴です。(何たってあったかいもんね)
音の出だしもドイツ語をしゃべるようにごつごつしています。
リード:
厚く重い(吹いた抵抗感)のと比較的薄く軽いのがあるが削りかた(スクレープ)は見た感じ一緒(U字型)
有名人:(好みの詳細は別な機会に)
ローター・コッホ(元ベルリンフィル。神様1だね!)
クレメント(元バイエルン放送響。神様2だね!この美しさは世界一!官能的)
宮本文昭(ケルン放送響。いやらしいけど大好き)
ギュンターパッシン(今は確かどっかの音大教授。あたりはずれが多いけどきれいだ!)
シェレンベルガー(ベルリンフィル。好きじゃあない!つまらない!)
古いところで
カールシュタインス(元ベルリンフィル)
ヴィンシャーマン(現在世界第一線の人たちの師匠である。ドイツバッハゾリステンをやっている)
グーセンス(この世界では結構有名。事故で歯を全部折り、演奏活動をやめてたが入れ歯で復活し絶賛された)
その他:ゴリッキー,マイヤー,

まあとにかく演奏者については別途ね!
楽器:
フルオートと呼ばれる非常にキーが多い楽器を使うことが多い。セミオートに比べある指使いが楽になるが、金属の柱をたくさん打ち付けてあるので当然楽器の振動を止め、吹くのにパワーが必要である。(私の今の楽器はそうだが、年を取るとちょっときつい!)でもなぜかそのせいかどうかわからないが、太く柔らかく高い音も痩せないで出せ、コクのある音が出せる。(強いて言うととんこつかな?)


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2.フレンチスタイル
これも文字どおりフランスを中心とするスタイルですが、今となってはあまり見ることができません。フランスの最近のオケの人はほとんどジャーマン(正確にはジャーマンから変化していったインターナショナルスタイル)よりになってきています。音色はやや固く細く開放的で、多少ビャーといった感じの音を絶妙にコントロールして美しく仕上げた感じである意味で一番OBOEらしい音色といえるかもしれません。私はこの音で OBOEとはこういうものだと洗礼を受けたと思っています。ただこのタイプが減っているのに皮肉なことに現在世界で使われている楽器のかなりがフランス製です。典型的なものとしてジャーマンはマリゴー、アメリカンはロレー、フレンチはリグータという3大メーカーが世界を牛耳っています。(最近他社も頑張っているようだが)
リード:
不明(吹いたことがない)ただかなり軽いらしく、 スクレープはV字
有名人:
ハインツホリガー(好き嫌い別にして知らなきゃモグリ!)
ピエールピエルロ(いかにもフランス人って名前だねこりゃ。ホリガーの先生。私が初めて聞いたOBOE奏者。素朴だよ)
モーリスブルグ(ホリガーと組んで、神業的な録音をしている片割れ。ファンも多い)
インダーミューレ(ホリガーの正当な後継者と訳のわからない触れ込みだが何を引き継ぐんだろうね?)
楽器:
セミオート(フルオートに比べキーの構成がややシンプルで繊細な表現が可能。替え指も多くハーモニックスで出せる音も多く表現の幅は広いが音が多少痩せて聞こえる感じがする)が主流。とにかくオープンな音色が特徴。ただ「フランスもの」を演奏するに適した(何をもって適するというかは議論があるが、昔のフランスのオケの管楽器の音色知ってますか?作曲者もきっとあのオープンな音色をイメージして書いたに違いありません。)音色だと思います。


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3.アメリカンスタイル
これはフランス人のタビュトーという人がアメリカに渡り、音楽を追求するのに非常に効率的なスタイルを確立した。ドイツの一部の人のように受け狙い(音色でびっくりさせてやろうとか思いっきりビブラートを掛けて伴奏なのに目立っちゃおうとか)はせず、非常にストイックなスタイル。私は最初このスタイルの先生に付いた。日本にいるとあまりソロなどでは聞く機会がなく素人受けしない地味なタイプだが、機能的に大変優れたタイプのリードを使い、音色にインパクトがないぶん音楽的に幅のある表現ができる。時にすごく下手に聞こえて誤解されることが多い。理由として音が固めで細い人が多くミーハーな宮本文昭などと比べると地味であるためと思われる。
リード:
元は厚いが、リード全体を削るロングスクレープが主流。人にもよるが、比較的楽なものが多い。ジャーマンの人が吹くと力を入れすぎて2枚のリードが貼りつき、音が全く出ないことがある。人によりかなり削りかたが違うが以前見たものは先端から3mm ほど薄くドイツ系は1〜1.5mm)急激に厚くなり(この厚さは尋常ではない)これが4mm程度続いた後、また薄くなるというとんでもない形をしていた。ただこれをW氏(日本人だがアメリカの第一線で活躍中)が吹くとなんとも美しく完成された音が出てくるじゃあありませんか!ドイツ系は根元から先端にかけてだんだん薄くしていくのが基本だったが、この世界はなんでもありなんだなあと思った。
有名人:
タビュトー(フランスから渡米しアメリカンスタイルを確立した。弟子がリードを見せて欲しいといったが、「自分で研究しなさい。見せる気はさらさら無いね」と言ったがしかしお金をポンと積んだら気前よく見せてくれたという逸話を読んだ事があります)
ゴンバーグ(兄弟で有名。一人はニューヨークフィルで活躍していた。美しい。個人的にはかなり気に入っている)
レイ・スティル(シカゴ響。かなりのガンコもの。あまり好きではない。練習中あまりうるさいので、指揮者が「Be STILL !」(じっとしてろ!)と言ったとか)
ジョン・マック(元クリーブランド管。非常に暗い音色が特徴)


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4.その他
あえて入れませんでしたがウィーンフィルは?と言われるとあれはあまりにも世界的に見て異質なのでスタイル論には入れません。あれはウィンナオーボエです。個人的には最近好きになったのですが(自分はああいう音は出したくないが)上記3タイプと比較はできません。別の楽器として捉えています。またバロックオーボエもしかりです。



5.これからのスタイル
さあこれは神のみぞ知るとこでしょうが、以前からある「ごつごつ系」「さわやか系」「バリバリ系」「ミャーミャー系」「ビャービャー系」「モコモコ系」「ジージー系」「胸キュン系」「クネクネ系」などいろいろあるけど、インターナショナル系の音に集約していきそうです。またコンクール向きのスタイルと言うのがあるような気もします。 97年の日本音楽コンクールもそんな気がしました。まぁ素直な音が基本と言ってしまえばそれまででしょうが、もう強い個性のある、アクのある演奏はああいう場では聞かれないのでしょうか。これもそれも、世界が情報的にどんどん狭くなっているからかもしれません。だって、私のような日本の田舎の自宅の部屋でいながらにして全世界のオーボエ奏者の音(CDやテープ等)が聞けちゃうんですから。ただ私としてはうまいだけのOBOEより、多少難はあってもインパクトの強い強力な個性を持ったタイプの人の台頭を望んでいるのですが。だってみんな同じ音で「あいつは何人中何番目にうまい」とかいうのって空しくないかなあ。

  ご意見、ご感想などは私(本橋)まで

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