10)リードの作り方−10(JDR NEWS 1994/10月)

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ナイフ(ヤスリ)とナイフの研ぎ方


リード作りや調整にナイフとヤスリ(主にバスーン)は欠かせません。しかし、ナイフやヤスリの特性や研ぎ方を知らないで使われている方が少なくありません。
今月は、ナイフの種類と使い方及び研ぎ方、バスーンのリード加工に必要なヤスリの種類と使い方及びメンテナンスについて説明します。

本橋注:本ページでは、バスーン用のヤスリに関する説明部分は省略させて頂きます。



ナイフの種類

ナイフは形状、大きさと刃の硬さ、角度によって分類されます。ナイフの大きさは主に重量と幅に関係します。

刃の形状

ナイフには両刃と片刃があります。リード削りには片刃が良く使われています。

オーボエ、バスーンのリードの削り方は、ナイフを垂直に当てて「ひっかく」ように削りますので片刃の方が使い良いでしょう。バスーンのリードは、最終調整にしばしば両刃を使用します。また、先端の形状が日本刀の刃先のように曲線になっているナイフは、特定の部分だけを削る(ひっかく=スクレープ)のに適しています。

ナイフの重さ

リードを削る加圧に関係し、ある程度重量があったほうが削り易くなります。ただし、刃が常に良く切れることが条件です。




ナイフの幅

大きいほどストロークが長くなるので、オーボエのロングスクレープタイプを削るには、幅の大きいナイフが適しています。ショートスクレープタイプはナイフの大きさにはこだわりません。バスーンの場合は、ナイフ全体をスライドさせて削りますので粗削りは大きいナイフ、仕上げは小さいナイフが使い良いでしょう。


刃の硬さ

ナイフは硬いほど刃持ちが良く、切れ味もするどくなります。しかし、リード削りに関しては当てはまりません。なぜなら、刃が硬いとケーンと反発しあって削りにくくなるからです。さらに削った面が硬く仕上がるので音色も硬くなります。また、硬い刃は研ぐのに苦労します。







刃の角度

刃の角度が鋭角であるほど鋭く切れますが、リードの削り方はスクレープ(ひっかく)なので鈍角の方が適しています。ケーンを削る角度は刃の硬さにもよりますが45〜65度ぐらいの鈍角が良いでしょう。カッターや両刃の鋭角なナイフはリードの表面を硬く仕上げますので音色が硬くなります。また、刃がケーンに食い込みやすいのでリードが欠ける危険性が高くなります。






ナイフの使い方  ナイフは使用する前によく研いでおきます。

リードの削り方は「スクレープ」という方法で、ケーンに対してほぼ直角に刃を立ててひっかくような動きをします。リード削りはケーンに刃が食い込んでしまったり薄く削ろうとして欠けたり穴が開いたりする失敗をよくします。しかし、これもナイフの状態と使い方次第で失敗の確率を少なくすることができます。そのためにナイフの使い方には、以下の項目が重要です。


ナイフの持ち方

スクレープに適した持ち方は親指と残りの指でナイフを押さえるように持って固定します。削るときは手首を回転させます。

バスーンのリードを仕上げる場合は、親指と人差し指でナイフを横から挟むように持ち、残りの指は下から支えます。削るときは、手首と肘を固定して腕全体をスライドさせるようにします。


押さえる力加減

一般にはナイフの重さで削ることが良いとされていますが、刃がよく研げていることが条件です。小さいナイフは、軽く押さえ付けて使用します。適切な力加減は、プラークを使わないでケーンの先端以外を削るとよく分かります。





ケーンに当てる角度

リード削りを始めた頃は、ケーンに刃が食い込んで切り傷が残って取れない経験をします。これは刃の向きがケーンに対して鋭角になっているために起こります。

原因は最初にケーンに対して直角に当てているからです。そのため、削り初めは問題ありませんがナイフの回転終了時に、ケーンに対して刃が鋭角に当たり食い込んでしまいます。未然に防ぐには削り始めを「刃を寝かす」状態から始めるとよいでしょう。1回で長く削る時は、幅の大きいナイフを使います。







動かす方向

リードを削るために必要なナイフの動きは一方向だけです。手首を回転させるか腕をスライドさせる時に、ナイフを引いたり押したりするとケーンは欠ける確率が高くなります。




ケーンを持つ手の動き

リードを固定して削る方は必要ありません。小さいナイフで長く削るのに親指と人差し指を使ってリードをスライドさせるとより効果的です。方法はナイフの刃の背に親指を乗せて固定します。その親指を支点にして残りのリードを持っている指を引きます。親指を押し出す気持ちで行います。動きは5mm程度ですがリード削りがさらにうまくできます。






砥石について

砥石はナイフの刃の長さに応じた大きさがよいでしょう。「アンドウナイフ」は刃が長いので水砥石の大きいサイズを使用します。「JDR STナイフ」のような小さいナイフは水砥石か大きめのオイルストーンを使用します。小さなオイルストーンは持ち運び用で修正に使います。水砥石もオイルストーンも砥石の表面が渇かないように常に水又はオイルが必要です。

水砥石もオイルストーンも黄土色の中砥石がリードナイフには適しています。できれば青色のやや荒目の砥石も備えておくと中砥石の表面が変形したときにお互いをこすり合わせて面を出すこともできます。
砥石の特性やメンテナンスは「JDR NEWS」の5,6月号を参照ください。


ナイフの研ぎ方

  1. オイルまたは水が十分砥石の面に乗った状態にします。ナイフは刃を前にして押し出すように研ぎます。手前に刃を向けると研ぎ方によって丸くなる危険が高くなります。
  2. 右手(左手)にナイフの柄を持ち、右手(左手)で刃の中程よりやや先の方を押さえて砥石の面に当てます。片刃のナイフは表側を重点的に研ぎます。裏の平らな面は、サビやバリを取る程度です。緊急の場合は裏面を研ぐとすぐに切れるようになります。しかし、後で修正が大変で場合によっては修正が不可能になります。                                                                                                                             
                                                        
                                                                                                                                                       
  3. ナイフがふらつかないように脇を締めて腕を固定し、身体ごと前方へ押し出すように研ぎます。ナイフを砥石に押さえ付ける力は強くします。最初のうちは5〜10回で疲れます。要領は刃と砥石の面をこすりあわせるような感じで砥石面に刃が引っ掛かっている感触を覚えて下さい。研ぐ動作になれるまではナイフを元の位置に戻す際に、砥石から浮かせて研ぎ始めの位置に戻すと刃先が丸くなるのを防ぐことができます。                                                                                                                              
                                                                                                                                                                                                                                                              
  4. 研ぎ続けると反対の面にバリが出てきます。このバリが刃全体にでたら、そのバリがでた面を研ぎます。もし、刃の裏面が平らでない時は、わずかに刃を立てるように傾けてバリを取り除いてください。再度、表にでたバリを取って仕上げます。                                                          
  5. 仕上げ砥石は刃の表面をきれいにし、切れ味を持続させることができますが、刃先が滑り易くなりますので仕上げないままお使いの方も少なくありません。









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