48)メンテナンス−8(JDR NEWS 1992/11月)

注意:


応急修理の方法


楽器の故障は、部品の消耗や劣化により少しずつ悪くなる故障と、部品の欠落やキーの破損による突然の故障に分かれます。前者は適当な時期に修理に出せば問題ありませんが、後者は突発的なトラブルなので困ることが多いと思います。ましてや演奏会の直前とか近くに修理者がいない地域ではすぐに直すことはできません。その時のための応急修理方法を説明します。ただし、時間的に余裕ができたら必ず修理に出してください。

タンポが落ちてしまった
落ちたタンポが手元にある場合
タンポがどの向きに付いていたかタンポの面についているトーンホールの後を見て向きを落ちる前の状態にしてボンド(なければ御飯つぶでもなんでもよい)を少量タンポに付け、カップに取りつけ、キーを作動させてトーンホールに軽く押しつけるようにします。
落ちたタンポが手元にない場合
クロスやハンカチをカップより小さめに丸く切ったものを2mmの厚さになるように何枚か用意します。次に身近にあるビニールの袋(ラップが最適)をカップに入れ、そのままカップを覆うようにビニールの四隅を対角線上に縛ります。後はタンポが手元にある場合と同じです。





スプリングが折れてしまった


ニードルスプリング(針バネ)が折れた場合
折れたバネが作動させていたキーに輪ゴムを巻き付け1〜2回ボディに回した後、他のキーの動きを妨げない場所を選んで他のキーやポストに引っ掛けます。


フラットスプリング(板バネ)が折れた場合
板バネに変わる素材を捜します。スポンジや厚手のゴム、なければ紙を折り曲げてもかまいません。難しいのは前に付いていたバネと似たような強さにしなければなりません。












キーコルクが取れてしまい音がでなくなった場合
キーとキーの間のコルクやキーと調節ネジの間のコルク
全体に音が出にくくなったり特定の音程が低くなります。とれたコルクの位置を見つけその部分に同じ厚さの紙を張ります、(厚さの平均は0.4mmぐらい)
取れた部分が分からない場合は高い音から順番に下がって吹いておかしい音になったキーの付近を捜してください。コルクの張ってあった部分はキーの表面が荒れていてネジの下やキーとキーの接触部分なのですぐ見つかります。
キーとボディの間のコルク
このコルクが取れると、ある特定の音程が高くなります。付け方は上記と同じですが厚さはオーボエの場合、0.5mmぐらい、バスーンは1.0〜2.0mmになります。


ネジがなくなった場合

ネジがゆるんでいる場合は締め直してください。ただし、締め過ぎるとキーが動かなくなりますので、ちょうど良い所を見つけてください。
ネジがなくなっている場合は、マッチ棒の軸の部分を手で折ります。その部分をポストに差し込みネジの代用をします。





キーが動かなくなった場合
キーが曲がっている場合
キーが曲がって動かなくなっている場合は、元の位置に戻せばよいのですが慎重にひねらないと折れる危険性がありますので十分注意が必要です。できれば慣れた方にお願いするほうがよいでしょう。


キーが折れている場合
折れたキーをボディから外し、折れたところに瞬間接着剤を塗り、接着します。
次にその部分にアルミホイルを折れた部分に巻き、アルミホイルごともう一度接着します。


ボディが収縮した可能性がある場合
時間に余裕がある場合は、濡らしたタオルを楽器に直接振れないように置いてビニール袋に入れ2〜3日置いておくと自然に動き始めます。
急ぎの場合は、動かないキーのネジをゆるめます。もしそれでも動かない場合はポストの間隔を広げるように木製のものを使って叩きます。


シャフトが錆びたり中にゴミが入ってキーが動かなくなった場合
シャフトを抜き取りますが、取れない場合はオイルを差しながらこつこつと木製のものを使って叩きます。しかし、あまり効果がないようでしたら修理に出すしか方法はありません。







ボディにひび割れが入った場合
トーンホールに入っていない場合
トーンホールに入っていない場合は瞬間接着剤を十分注意して少しずつ流して埋めてください。できればその付近のキーは外したほうが安全です。
トーンホールに入っている場合
その付近のキーを外します。そして、瞬間接着剤を十分注意して少しずつ流します。その時必ず守らなければならないのはトーンホールには直接接着剤を流さないことです。自然にトーンホールにも流れ込んできますのでトーンホールはそのままにしておいてください。もちろん乾かないうちにトーンホールに触れたりするとタンポが塞がらなくなります。
スワブが抜けなくなった場合

演奏会の前日や直前に限ってよく発生するトラブルで、専門の修理者でないとまず取ることはできません。慣れない手つきでやると楽器の内径を傷付けてしまい楽器自体をだめにする可能性が高くなります。
とにかくスワブが詰まりそうな気配を感じたらすぐに手を止めて安全な方法を取ってください。




オーボエのリードの差し込み口の金具がぐらつく場合

オーボエのリード差し込み口の金具は季節の変わり目や湿度の大きな変化によってぐらついてくることがあります。ここの部分がぐらつくと息が漏れて音量や息の抵抗に大きく影響します。
修理の方法は、まず金具をボディとの隙間がないようにしっかりと奥にいれます。
そして金具とボディの隙間に瞬間接着剤を少し染み込ませてください。15秒ほど経ってから隙間全体に塗ってください。



バスーンのボーカルが曲がった場合

本橋注:省略いたします。




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