バックナンバー:96 2006/3/1


読者の皆様、

 

お元気でお過ごしでしょうか?

 

冬季オリンピックをテレビでご覧になっていた方々はヨーロッパの天気の状況

を御存知だと思いますが、2月は南ドイツにどか雪が降りました。アルプスに

も雪は降り続いております。北ドイツ、ここブレーマーハーフェンも積もりは

しませんが雪模様。日が少し長くなり明るさは増して来ましたが、まだ冬から

抜け切れません。東京の抜けるような青い冬空が羨ましいです。

 

ヨーロッパの話題は、今までオリンピック。これからはサッカーのチャンピオ

ン・リーグ。それからワールド・カップと繋がります。ドイツの今年のサッカ

ー・リーグ戦はワールド・カップの陰に隠れてしまうでしょうね。

 

ドイツの政治では、先日、初の女性首相就任100日目のお祝いがありました。

(こんな事今までなかったような・・・。)

ドイツの政治は現在、与党が大きすぎて野党の声が聞こえて来ません。イラン

問題でアメリカよりの外交を展開しているのが、前の首相と比べると迫力に欠

けるし、これで政治の方向として良いのだろうか、と疑問に感じます。

 

世界に目を移すと、トルコでイスラムの英雄がキリスト教の国々からイスラム

教徒を守り抜くというストーリーの映画が大ヒットしているそうです。イスラ

ム諸国もブッシュ政権とキリスト教の国々に対し非常に挑戦的で、このまま世

界がイスラムを孤立させる方向に動くと、日本が第2次世界大戦でABC包囲

網にあって開戦を止む無くされた二の舞になります。

 

イランが原子炉の核をロシアで作らせる方向で、核爆弾を作らず平和利用に使

用するという解決を図ろうとしているのですが、イランを攻めたいアメリカに

は気に入らない方法のようで、これからまたアメリカの得意な言いがかり作り

がどのように続くのか、と考えると辟易して参ります。

 

 

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■ ロシアでマーケットが崩壊

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22日ロシアでマーケットが雪の重みで崩壊。今年はこのような建築物が雪の

重さで押しつぶされる事故が相次いでいます。このマーケットを設計したのは

2年前つぶれた屋内プールと同じ技師だそうです。

 

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■ レンブラントとカラバッジョ         

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アムステルダムのゴッホ美術館で、レンブラントとカラバッジョの作品を集め

て特別展覧会が開かれています。今年はレンブラント生誕400年記念ですが、

その一環として企画されました。カラバッジョが死んだ時にレンブラントは7

歳で直接教えを受けてはいませんが、カラバッジョの光と影の手法は後にレン

ブラントに大きな影響を与えたそうです。バロックの巨匠達の展覧会、見ごた

えがありそうです。5月くらいまで開かれているそうですから、オランダ旅行

でチューリップをご覧になろうと計画されている方、アムステルダムのゴッホ

美術館のこの企画も頭に入れて置いてください。

http://www.vangoghmuseum.nl/

 

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■ ドイツでも鳥インフルエンザが発生

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ドイツの有名なバルト海に面した避暑地でリュッゲンという島があります。

14日に白鳥が死んでいるのが発見され検査したところ鳥インフルエンザの菌

を持っていたことが確認されました。

 

島には橋で渡れるのですが、出入りする全車両のタイヤを消毒。飼育所で飼わ

れている鳥類は外出禁止、という処置が施されています。家畜に予防注射をす

るかどうかという議論に関して、予防注射はあくまで予防であり、現在の状況

では効果薄す。また、感染していても発病しないと分からないままで済まして

しまう可能性が大きく、かえって危険を招く、との厚生大臣の決定でした。

 

死んだ白鳥の処理が遅かったため、かもめがつついているので、鳥インフルエ

ンザが広がる可能性が高く、警戒を強めています。

 

26日現在、フランスでは鳥インフルエンザの菌を持った家畜が死亡。鳥イン

フルエンザは北東ドイツ地方、スイスでも発見ざれております。

 

 

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■ オリンピックが盛り上がらない

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冬季オリンピックが日本では盛り上がっていなかったようですね。ドイツでは

アテネの夏季オリンピックと比べれば盛り上がりに欠けてはいますが、国営放

送であるARDとZDFが毎日交互に、オイロ・スポーツという放送局が連日

オリンピックの実況をしており、テレビをつければいつでもオリンピックが見

られました。メダルの数もドイツが世界のトップで、やはりメディアにとって

はメダルがあると盛り上がりが違うようです。

 

モナコのプリンス・アルベルトは確か47歳。ボブスレーの元オリンピック選

手で、冬季オリンピックのコミッションにも参加しています。彼がテレビのイ

ンタビューに答えていました。

 

今年のトリノ・オリンピックが盛り上がらない理由の一つはロケーションの問

題で、開催地がかなり離れ離れになっている事。その為に観客にとって雪の悪

天候での細い山道の移動が難しく、チケットは売れているのに現地のスキー場

まで見学に来る人が限られている事、などを挙げていました。この事はトリノ

を選んだ時点から予想はされていたそうですが、次のリラハマーでのオリンピ

ックではこの問題は縮小される、そうです。

 

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■ オリンピックと日本、音楽

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低迷していた日本に金メダルをもたらした荒川静香選手の演技を偶然拝見しま

した。きっとさえなかった日本のオリンピックニュースに光が差し込んだ事と

思います。体つきも西洋の女性に引けを取らない荒川選手。技術に裏づけされ

た演技も素晴らしかったですね。

 

また、スキーの回転では惜しくもメダルを逃しましたが日本選手の活躍には手

に汗・・・・。ドイツのテレビのアナウンサーが「日本がスキーの回転でメダ

ルを取ったのは50年前のコルチナ・ダンペッチオ。トニー・ザイラーという

三冠王を取った年のオリンピック大会にて猪谷選手が銀メダルを獲得。もし今

回メダルが取れたら味噌汁で乾杯!」と言っていました。コルチナ・ダンペッ

チオはジェームス・ボンド映画のロケ地にもなり、イタリアの超高級避暑地、

件、冬のリゾート地です。

 

雪の降る中、オリンピック選手が次々にポールを外したり転倒したりして失格

する中で、湯浅選手がかなり長い間1位を確保していました。日本には残念で

したが、結果はオーストリアが3つのメダルを独占という快挙でした。ご存知

でしょうが湯浅選手は第7位、皆川選手はおしくも第4位でした。

 

オリンピックでは記録が1位の人が立っている場所があります。誰かが記録を

更新するまで、そのお立ち台にいる事ができます。湯浅選手はそこにかなり長

い時間立っていて、テレビにも映してもらえたのですが、新しく記録を更新し

た選手と交代。湯浅選手より成績が良かったのですが、前の選手の記録を打ち

破っていない為に皆川選手はお立ち台にも上がれずテレビに映る回数も少なか

ったのは、不運と言うのでしょうか????

 

フィギアスケートにしても、スキーの回転競技にしても、選手達は力量のぎり

ぎり以上の危険を冒し、限界の突破をめざしていました。安全に無難にプレイ

していてはメダルには到底手が届きません。楽器を演奏していても同じような

事を感じます。オーボエでクレッシェンドを大きくすると音が荒くなります。

またディミヌエンドで消えるように演奏しようとすると音が切れたり、音程が

上がってしまったりします。素晴らしいピアノで切り出すのは発音しなかった

り、音が爆発したりと危険が伴います。だからと言って安全圏内で演奏してい

たのでは、納得のいく演奏とは言えないでしょうし、美しさにかけます。失敗

を恐れて萎縮していたのでは良い結果は望めない事は演奏者自身、オリンピッ

ク選手自身が十分自覚しているわけです。

 

スキーの回転で、あれだけ素晴らしい技術をもったスキー選手達の4割はゴー

ルに到達しなかったのは、その素晴らしい挑戦精神の表れですね。

 

さて、良い演奏する為に、またリードの製作に取り掛からねば・・・・!

 

 

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■ 質問コーナー(オーボエの中音Fがひっくり返る その1)

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読者の方から「オーボエの中音Fがひっくり返るのですが、どうしてでしょう

か? また対処法を教えて頂きたいのです。」という御質問を頂きました。

 

私自身、ヤマハを愛用しておりますが、Fにはリゾナンツ・キーが付いており、

弟子に買って頂いているオーボエもリゾナンツ・キーが付いている楽器を選択

している関係でしょうか、今までそのような状況に陥った事が無いので、日本

の知人・友人達、更にはメーカーの方にもお尋ねして状況と御意見を頂きまし

たので、ご紹介いたします。

 

全部で5回の連載を予定しております。皆様に少しでも御参考にして頂ければ

幸いです。また、この件に関する御質問、御意見をお持ちの方、私のほうへメ

ールを頂けますか。

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

まずは、この問題に関してホームページ「アトリエ・アー」で取り上げていら

っしゃる管理人、金谷様の御意見です。

http://www2.ocn.ne.jp/~atel.a/oboekaufen.html

 

YAMAHAのオーボエはピッチが低く設計してあります。高めのピッチのリードを

使用して高めに演奏することが可能ですが、そのかわり中音のFがひっくり返

る(不安定になる)可能性があります。低めのまま吹くか,中音のFがひっく

り返るのを承知の上高めに吹くか、いずれかを選択しなければなりません。専

門店で音程を上げる調整をすると数万円かかります。またFリゾナンスキーを

増設する方法もあります。たとえばJDR仕様のYAMAHAのオーボエのように中

音のFを改善してある機種も発売されています。繰り返しますがオーボエはダ

ブルリード専門店で購入するのが最も安全です。

(アトリエ・アー、ホームページより)

 

金谷様からの追伸

ちょうどきょうJDRから電話があり,ついでに萩森さんに代わってもらって判っ

た情報です。現在発売されているヤマハのスクールモデルの43xシリーズ、す

なわちYOB-431および432は相変わらず中音Fの問題は解決されていないとのこ

とです.Customの83xシリーズはJDRでなくてもオプションでFレゾナンスキー

の取り付けが選択できるとのことです。JDR仕様の43xシリーズはFレゾナンス

キーが装備されていて、中音Fは問題ないそうです。興味と予算(?)があって

421JDRをサブの楽器として使ったことがありますが、中音Fは私のRigoutat

Symphonyより安定していました。

 

萩森氏はJDRで長年オーボエとファゴットを中心にりペアーをしていらっしゃ

います。上記の情報、ならびに御丁寧な御意見を頂戴しておりますので皆様の

お役にたてれば幸いです。また、メールマガジンに公開を快く御承諾頂き、心

より感謝いたします。

 

萩森様からのお返事はこのようなものでした。

 

末政 圭志 様

 

前略、メールありがとうございます。ご無沙汰致しておりますがお元気ですか?

さっそくですが、F音がひっくりかえるのは楽器の問題ではなく、吹き方やリ

ードの形状にあります。と言うよりも、A=442hz以上で吹こうとすると

無理があると言う事です。したがって、高めのピッチで設計されている楽器は

ひっくりかえりません。ピッチの低い楽器(初期のヤマハも含まれます)でF

安定させるには、中音域のピッチを上げるしかありません。それには、Low

CキーとDキーの開きを大きくするのが簡単です。ただし、D・Eのピッチが

高くなるので元々低いFとの差がさらに大きくなります。それ以外の方法はす

べて、吹き方(息の圧力等)やリードとの相性で効果の有無が決まるのでやめ

た方が無難です。設計で言えば、音響上はベル(LowBリゾナンスキー)付

近が関わりますが、吹き方ではFキーより低いトーンホールの位置や形状が影

響します。

 

日本ダブルリード株式会社 萩 森 弥 郁 夫

160-0023 東京都新宿区西新宿1-4-11宝ビル3F

Tel03-3346-1761 Fax03-3346-1764

 

 

浜松・ヤマハ(株)管楽器設計課・宮岡愼里様よりの御意見

 

YAMAHAのオーボエはピッチが低く設計してあります。

 

ピッチが低い、という多くのお客様の声に応え、43Xシリーズでは42Xより高く

設定をしております。

 

 

>現在発売されているヤマハのスクールモデルの43xシリーズ、すなわち

YOB-431および432は相変わらず中音Fの問題は解決されていない

 

全体ピッチに加え、F音そのものの音程も上げて中音F問題の軽減を図ったつ

もりでした。ただ、どのような条件でも中音Fが大丈夫という完全な解決に至

っていないのは否めません。このオーボエという楽器に宿命的な問題について

は「その4」で付け加えさせて下さい。

 

 

Customの83xシリーズはJDRでなくてもオプションでFレゾナンスキー

>の取り付けが選択できるとのことです。JDR仕様の43xシリーズはFレゾナンス

>キーが装備されていて、中音Fは問題ないそうです。

 

Fレゾナンスキーは43Xシリーズでも注文可能です。実はドイツからの受注の約

半数はFレゾ付となっています。値段や納期の制約はありますが...

尚、4XX-JDRは、Esキーが少し浮くタイプの「簡易Fレゾ」です

(バナナキーの位置に特殊キーが入るタイプ、JDRさんのみ限定仕様)。

 

 

ヤマハ株式会社 管楽器設計課 宮岡愼里

430-8650 静岡県浜松市中沢町10-1

Tel: 053-460-2071(代)

 

 


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