バックナンバー:87 2005/10/15


読者の皆様、

 

お元気でお過ごしでしょうか?

 

ドイツは秋たけなわです。この時期のことをドイツ語ではGoldene 

Herbst(ゴールデネ・ヘアプスト、黄金の秋)と呼んでいます。天気は

よく、紅葉が進み、空気も冴えてきます。

 

この時期のドイツ人のすることは?

 

そうです!「庭仕事」

 

私も庭木の刈り込みを行っています。16年間愛用した、電動の庭きりバサミ

とでも言うのでしょうか、刃渡りが1メートルくらいあり、直径1センチくら

いの幹なら分けなく切り落とせます。我が家には生垣があり、このハサミは大

変重宝していまいた。ところが、とうとうモーターがお釈迦!

 

一番下の娘は

 

 

「ええ〜〜〜、そんなの困るじゃないの!」 

 

 

 

「そうなんだよ!」(心配してくれて、感心、感心)

 

 

 

「パパ、そのまま庭木、ほっとくの?」

 

 

 

(ちょっと待て! お前、この長大な生垣、手で刈れ、って言うのか???)

 

 

 

 

 

今回はオーボエ奏者を目指していらっしゃるある若い方からメールを頂きまし

た。私が自分の過去の事を書き出すと、何だか非常に歳をとった気がして・・・。

ただ、若い方には頑張っていただき、将来日本のオーボエ界を支えていって欲

しい、そういう思いがありますので、今回は私のお返事を彼だけにではなく、

オーボエを目指している方々に読んで頂こうと思い、本日のテーマに選びまし

た。

 

毎年、例えば、日本全国に音大が20校あったとします。毎年、各大学から2

人卒業すると日本全国で40名、卒業者が出ます。毎年毎年それが繰り返され

ます。オーケストラの入団試験は、となると10年に10席あれば、という状

況です。10年には卒業者が400名。それが10個のポジションを争奪する

ことになります。中には学校の先生になられる方もいらっしぃます。楽器の販

売、修理に向かわれる方もいらっしぃます。それでも就職できない人の方が圧

倒的に多いのです。ですから、オーボエを勉強して、それで食べていこうと思

うのであれば相当な覚悟を持って立ち向かう必要があります。

 

留学してもプロになれずに帰国される方々はたくさんいらっしゃいます。狭き

門をくぐってきた割には見入りも少ないし・・・・、という事になりますが、

好きなことを職業にし、苦難もありますが、張り合いのある生活をしているこ

とは確かです。

 

 

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■ ドイツ連邦議会選挙結果 初の女性首相誕生 アンゲラ・メルケル

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9月18日に行われたドイツでの連邦議会選挙の結果が出ました。日本でも報道

があったと思いますが、日本の小泉政権が圧勝したのと比べ、ドイツは非常に

ややっこしい事になっています。

 

2大政党が与党を組み、現シュローダー首相が退き、新しくメルケル首相の誕

生となりましたが、SPDは首相の座をおとりにして、14大臣のポスト中8

ポストを獲得。その大臣ポストも割りと国内政治に重要なポストを得ており、

シュローダー首相の捨て身作戦が功を奏したようです。

 

ドイツの主要株式市場DAXは30社から構成されていますが、そのうち、女

性社長はゼロ。重役にも2人いるのみ。その面から考えても、今回のドイツ初

の女性の首相は快挙といえます。SPDは大臣ポストの他に、この女性党首の

発言権を極力押さえる交渉を今も続けております。内閣の構成は明日発表され

る予定です。

 

これで、ドイツも宙ぶらりんな政治状況から、新しい方向に向かうことができ

ます。

 

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■ 読者からのご質問 ドイツ留学

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僕は、高校3年生です。現在音大をめざしていて、プロのオーボエ奏者に師事

しています。いずれはドイツ留学を考えています。前々からサイトを拝見させ

ていただいておりました。情報満載ですばらしいです。 

 

先日、知り合いの方から末政先生のことを教えていただきました。ドイツ留学

をいずれ考えるのであれば、コンタクトをとっておけばいいのでは、と進めら

れてメールさせていただきました。

 

留学の件はまだまだわからないことが多く困惑している状態です。末政先生自

身、ドイツに留学なさってよかったことなどあったら教えてください。

 

突然のメール失礼しました。お体に気をつけてお仕事がんばってください。

 

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メールありがとうございました。

 

私のサイト、現在開店休業です。春にコンピューターがクラッシュしてから私

のサイトにつなぐ作業をしておりません。まず、コンピューターを完全に復旧

してから、サイトのアップデータと思っているうちに、時がどんどん流れてし

まいました。

 

現在はメールマガジンに重点を置いております。もし宜しければ、ドイツの事

を満載しているメールマガジンを合わせて購読してみてください。

 

 

 

 

私が学生になった頃は、現在N響の北島さんが既にノルト・ドイッチュ・フィ

ルハーモニーというオーケストラの主席になられておりました。それから宮本

文昭さんがエッセンにやはり主席オーボエでいらっしゃいました。当時は日本

人プロ奏者は少なかったのですね。今でこそドイツには20名以上日本人のオ

ーボエ奏者が活躍しておりますが。

 

さて、現在高校生のあなたが留学を目指されていること、素晴らしいと思いま

す。実は私も、あなたの年齢くらいからドイツ留学を考え始めました。

 

私は高校3年の時は東京芸大、助教授の故・梅原先生に師事しておりました。

その時にきっと大学生の方だと思うのですが、ヴィンシャーマン先生の所に留

学される、という方のレッスンを偶然にもお聞きしたことがありました。オー

ボエを始めて3年目の私には、それはそれは上手な方でした。

(不思議なことに未だにその方がどなただったのか不明なのですが・・・・)

 

丁度、私が高校3年の時に、京都芸大の岩崎先生が東京でリサイタルをなされ

たのです。梅原先生からご招待券を頂いて、拝聴した時に、私の次の先生が決

まりました。岩崎先生はドイツ留学からお帰りなったばかりで、そのコンサー

トは先生にとっては日本に戻っての最初の重要なコンサートだったのです。共

演者にはフルートの吉田雅夫先生(東京芸大教授、NHK交響楽団ソロ・フル

ート奏者)、ヴァイオリンの岩淵竜太郎(京都芸大教授)などが顔を並べ、大

変楽しいコンサートでした。

 

当時私は荻窪に住んでおりましたが、吉田先生もお近くだったのです。そのコ

ンサートの後、何ヶ月か経過してから吉田先生に新星堂というレコード店で偶

然お会いし、その時の演奏会の事、岩崎先生の事を立ち話してくださいました。

吉田先生も岩崎先生に指示することを薦めてくださったので、京都芸大に行く

決心が徐徐に固まりつつあったのです。

 

岩崎先生に京都芸大で指示したことは、私のドイツへの道でもあったのです。

岩崎先生のデトモルトでの先生、ヴィンシャーマン教授は当時まだ教鞭をとっ

ておられましたので、孫弟子として私を弟子に採っていただいたわけです。

 

当時はドイツ留学を目指した場合、筆頭の先生は3人。1人はベルリンのロー

ター・コッホ。1人はフライブルクのハインツ・ホリガー、そしてデトモルト

のヘルムート・ヴィンシャーマンでした。

 

私は岩崎先生の御推薦もあり孫弟子ですから条件も良いし、幸い、DAADか

らの給費留学生の試験を京都芸大卒業前にパスし、デトモルトの大学入学への

パスポートは事前に入手したいたようなものでした。

 

いざデトモルトに来てみると、上手な先輩がたくさんいらっしゃいました。卒

業されたばかりの北島、宮本さん、シェレンベルガーも卒業してそんなに時が

経っていませんでした。学生では日本人の現在ビーレフェルト歌劇場で京都芸

大での先輩の鈴木さん、現在、センチュリー管弦楽団の城石さん、ドイツ人で

はベルリン・ドイツオペラのトーマス・ブッフォルツ、ダルムシュタット歌劇

場のディーター・グロート、ミヒャエル・シューベルト、後輩の留学生で日本

人オーボエ奏者でプロになって活躍されている、読響の辻さん、新日の七澤さ

ん、名フィルの諸岡さん(歳は私より上ですが、ミュンヘンで勉強されていて

デトモルトに移ってこられました)、同志社女子の先生をされている清水さん、

等等、たくさんの方と御一緒に勉強ができました。その他にもドイツ人、イギ

リス人、オーストラリア人、など当時の学生でプロになったオーボエ奏者が4

〜5人います。

 

留学とは、このような方々とお知り合いになれる、その環境の中で勉強できる、

という利点があります。失礼ながら、日本の音大にはプロになりたいと志を持

っていない方も多くいらっしゃいます。ドイツまで留学して音楽を勉強しよう

とする方々の集団とは意識、レベルが違います。そして、この学生集団の中か

ら次々にプロ奏者が生まれているのです。「彼が○○のオーケストラに入った」

とか「○○がコンクール入賞」とかいうニュースは実に多かったのです。そう

いう環境に自分が置かれれば、おのずから今度は・・・・、と頑張りますよね!

 

次にドイツというクラシック音楽への環境はやはり違います。教会ではしょっ

ちゅう音楽会が行われ、学生でもどんどん演奏のチャンスが生まれます。教会

は今でも人々の生活と密着しています。クラシックコンサートは年寄りが多い

ことは事実で、現在、聴衆の若返りがクラシック界のテーマになってはおりま

すが、演奏会が日本のように東京、大阪に集中しないでどこでも良い演奏会に

接することができるのは流石だと思います。

 

留学を目指すのであれば、ヨーロッパなら、モーリス・ブールグのクラスが現

在最高峰だと思います。フランス人ですが、国際コンクールの入賞者を見ても

圧倒的に彼のクラスが強いです。

 

ドイツですと、今のところ選択するのは難しいですね。優秀な先生が定年で教

職を退きつつありますから・・・・。若い入りたての先生は、まだ実績が無い

ので、先生として良いのか悪いのか判断が難しいところです。

 

もし、ドイツ、と心に決めていらっしゃるのであれば、語学を勉強してくださ

い。後のことは先生に直接ご相談するのが一番だと思いますよ!

 

志を持って望めばきっと留学が叶うと思います。頑張ってください。

 

 

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■ オーストリアでは日中もヘッドライトを

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今年の11月15日から、オーストリアでは日中もヘッドライトを点けて走行

する事が義務付けられます。北欧の冬、暗い中、日中もヘッドライトを点けて

走るのは普通ですが、中央ヨーロッパでの実施はオーストリアが最初です。

 

スウェーデンのVolvoという車があります。この車は走るときはヘッドラ

イトが点きっぱなしなのです。

 

ドイツ車はヘッドライトの点滅は日本車と同じ様に手動です。

 

また、オーストリアの高速道路は有料で、ビグネットと呼ばれるシールをあら

かじめ購入し、窓ガラスに貼り付けておく必要があります。今までは峠は無料

だったのですが、来年から有料になる峠が出てくるようです。有料道路の事を

ドイツ語ではMaut(マウト)と言っています。ビグネットを実施している

のは、オーストリアの他にはスイスがあります。

 

ビグネットはドイツではADACという自動車クラブで販売しています。現地

では国境で購入可能。マウトは現地の料金所で支払います。

 

 

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■ モネの展覧会

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ブレーメンの美術館ではモネの作品を世界中から集め、来年の2月26日まで

展示します。

http://www.bremen-tourism.de/k1-rubrik_unter.cfm?index=523

 

今回の展覧会はモネが奥さんのカミレを描いた、女性像を中心に集められてい

る、ということです。一昨年はゴッホ、昨年はムンクと1人の画家にテーマを

絞って、その画家の生涯と作品を追っています。

 

今までの展示は大変素晴らしく、訪れる人が多く、入場するのに1時間並ぶこ

ともしばしばですが、見る甲斐は充分あります。

 

 


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