バックナンバー:82 2005/6/15


読者の皆様、

 

お元気でお過ごしでしょうか?

 

サッカーWMで日本代表チームが出場権を獲得しましたね〜!2006年のほ

ぼ今ごろ、サッカーの国際試合がドイツ各地で繰り広げられます。私もインタ

ーネットでWMチケットを申し込みました。まだ出場国が決定していない時点

で申し込み、日本希望をクリック。要するに日本チームが参加する試合を申し

込んだ形になります。日本チームが勝ち進むと共に私の財布が空になっていく

システムだったのですが、はずれ!従って観戦はテレビとなりました。

 

助かった(父親)

残念(娘達)

 

というわけで来シーズンは始めのうちに頑張って仕事をして、この時期を暇に

導くことを考えている私であります!!!

 

本日からドイツでは、ミニWMといわれる、サッカーのコンフェデレーション・

カップが始まります。世界の強豪8カ国が集まりドイツ各地で試合が行われま

す。日本の入っているBグループはブラジル、ギリシャ、メキシコ。

ドイツの入っているAグループにはアルゼンチン、チュネジア、オーストラリ

アで構成されています。

 

日程は

http://www.zdf.de/ZDFde/inhalt/1/0,1872,2208161,00.html

 

 

 

今回は読者の方から御質問のメールを頂きましたので、メールマガジン上で簡

単な私なりの解答を書かせていただきます。

(いつも一方通行なメールマガジンが相互方向に向かうことは嬉しいことです。

御質問ありがとうございました。)

 

ヨーロッパは現在EU憲法批准問題で大揺れです。揺れているのはしかし政治

家とメディアで、国民には何の変化も無ければ影響もありません。失業者が直

ぐにでも就職できるわけでもなく、また憲法が無くても失業率が著しく高くな

る事もありません。しいて言うならこの問題でユーロが安くなってしまい外国

旅行が高くなったのは事実です。

 

内容は揺れ動くヨーロッパの社会・政治問題で難しいテーマとなってしまいま

した。しかし、これが今のヨーロッパです。御了承いただきお付き合いをお願

い申し上げます。

 

 

 

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■ EU憲法の長所

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> EU憲法案 の件

> オランダ?でも否決? 英国では投票延期?

> など日本の新聞でも取り上げられておりますが、今ひとつ賛成側の主張(た

> ぶんこれまでのEUの趣旨から「統一」感を目指す? もちろん経済的な

> 「利点」から?)と反対側の主張(いまのところトルコなどが入ってくると

> イスラムの力が働くのがいやだという話)がよく見えません。

>  いつか整理して教えて下さい。(オーボエフレンドで)

 

賛成側(EUの政治家達)の主張を簡潔にまとめると、一国がばらばらで主張

するよりヨーロッパの国がまとまって意見を出した方が発言力が強いではあり

ませんか?ということだと思います。同じような利害関係を共通している隣国

同士が一つにまとまって国際的な発言をする方が、個々に意見を述べるより強

力です。冷戦が終わったヨーロッパでは軍事関係では一気にNATOを拡大し

てしまいました。(日本は台湾問題を含めて中国、北朝鮮問題と戦後と冷戦の、

処理が続いていますが, ヨーロッパは東ドイツの崩壊、続くソビエト連邦の崩

壊で冷戦終了の条件が整ったチャンスを活用しました)経済的には通貨を統一

し国境(関税の撤廃)を無くし物と通貨の流通がスムーズに進むようになりま

した。今度は政治的に隣国がまとまって、世界的な発言権を強め利害関係を共

有しよう、というのが一番の狙いだと私は理解しております。

 

その為には現状を維持するだけでは不十分です。お互いに協力関係を維持する

努力をし、法律的に参加国をしっかり拘束し、その為の憲法を成立させてこそ

EUのEUたる形を整えることが出来る、ということではないでしょうか。議

会制を引いている以上、何らかの法的なよりどころがあるのが普通です。今ま

でにニース協定というものがありました。しかしEUも新しい国々を加盟させ

た事により、新たな問題が出てきており、それだけでは対応できない状態に変

化してきた。そこで新たな協定が必要になり、今回の憲法が作られた、という

のが進行の状況です。

 

反対に回った今回のフランス、オランダですが、一番大きな原因は、旧EU諸

国の失業者問題といわれております。新しい加盟国からの安い労働力が、国境

が無いわけですからストレートに旧EU諸国に入ってきました。また旧EU諸

国の企業は安い労働力を求めて今まであった工場を閉鎖し、新しい加盟国へ移

しています。更にEU以外の国へ、例えば現在はBRIC諸国(ブラジル、ロ

シア、インド、中国)への移行も後を絶ちません。従って、旧EU諸国の失業

率が下がらず、対策も出ていない、という不満が、この大型化したEUとその

憲法批准に対する国民投票に現れた、ということだと思います。

 

それではこれからのEUはどうなるのでしょう。或いはEUはまた白紙に戻っ

てしまうのでしょうか?という問題が出てきます。現在、政治家がこのテーマ

についていろんな意見を述べています。EUの本拠地ブリュッセルでは7月に

この問題について協議されることになっています。またEUは来年度から中期

の予算案に向けての審議は既に始まっております。ですから、今回の憲法が批

准されなくても現状の機能は果たしています。

 

憲法批准に話を戻しますと、フランス、オランダは国民投票を再度行うという

手段があります。それまでにしっかりと政治家が国民に説明し、アピールをし

てから再度の国民投票、ということは有り得ます。別の方法は、憲法をもう一

回見直しては、という意見もあります。或いは、強硬手段ですが、EU参加国

一致ではなく、多数決に変えて乗り切っては、という動きもございます。

 

ヨーロッパの政治家達は、この憲法が成立しなかった時の対策はまったく考え

ていなかったのが実情で、問題が出てきて始めて再度検討に入った、というの

が現時点の状態です。

 

EU議会からの声としては、これだけ時間と労力をかけてこしらえた草案を、

国民投票の際に、政治家達が国民に対してしっかりと内容を説明、宣伝する努

力を怠った事が、今回の国民投票の否定につながっている、とフランス、オラ

ンダの政治家を非難しました。

 

ここで、一つ面白いというか不思議な事があるのです。憲法を作る、そして、

ましてや国民投票、という事になれば、その内容を細部にわたって丁寧に発表

し解説が加えられて当然だと思うのです。以前、新しくEUが発足する時、ま

た貨幣がユーロに変わるときは政治とマスコミは紙面と放送時間を割いて論議

していました。

 

今回のEU憲法批准に関しては、ひょっとするとフランスとオランダでは、或

いは国民投票がなされる国々では、そのような内容を詳しく検討する報道があ

ったのかもしれません。ドイツに関して申し上げるなら、内容に関する解説、

説明は皆無です。あったとすると草案は3百何項目からなり複雑である、とい

う程度のものです。そんな感じなので私自身も自分で努力して、それでは憲法

草案を読んでみようか、という気が起こらない、というのが実情であります。

(読者の皆様には申し訳ございませんが・・・。)

 

そのような実情が今回の批准への空振りにつながったのでは、と思ったりして

おります。

 

尚、日本語のEU憲法関係のインターネットでの情報は、次のようなサイトで

ご覧になれます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E6%86%B2%E6%B3%95

http://www.max.hi-ho.ne.jp/nvcc/FE4.HTM

 

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■ スイスがEUに?

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永世中立を保っていたアルプスの国、スイスの国民が6月5日にEU憲法を国

民投票により承認。フランスの「Non」、オランダ「Nee」に続く国民投

票の結果、スイスはヨーロッパとの国境を開くことになりそうです。6日、イ

ギリスのブレア首相は国民投票を延期。ユーロ通貨に対して冷ややかなイギリ

ス国民に、今の時点で憲法への国民投票しても結果は見えている、との事です。

 

現在ヨーロッパEU諸国は、来年度の国家予算の支出赤字に苦しんでいます。

それに加え、今回のEU憲法の足並みが揃わなかったことで貨幣ユーロが落ち

てきています。

 

おかしなもので、通貨が落ちてくると、アメリカからの投資が強くなり、ドイ

ツの株式指標DAXは36ヶ月間の最高値である4542ポイントをつけてい

ます。(この事はひょっとするとドルを判断する面で大事なことかもしれない

と考えています。アメリカ人がユーロに不安を感じればヨーロッパの株式市場

だけではなく不動産に投資することは考えにくいです。憲法問題でユーロが落

ち時にアメリカからの資金が入ってきている、という事ですから、いずれこの

政治問題が収まった頃には、またドル安になっていくことは充分考えられます。

それがいつなのか?分かる方がいればソロスのような大投資家になれます。)

 

 

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■ バッハ、ヘンデルのオリジナル楽譜   

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ワイマールにあるアンナ・エミーリエ図書館が2004年に一部焼失したこと

はメールマガジンでお伝えしたので覚えていらっしゃる方もお出でかと思いま

す。その図書館で整理中にバッハオリジナルの楽譜が見つかったそうです。

http://www.br-online.de/kultur-szene/artikel/0506/09-haendel/index.xml

 

発見されたバッハの作品はソプラノと弦楽オーケストラと通奏低音の為の曲で

1713年にザクセン・ワイマールのウィルヘルム・エルンスト候の52歳の

誕生日の為に書かれた曲だそうです。「すべては神と共に、そして彼なしでは

何も無い」(Alles mit Gott und nichts ohn ihn)というタイトルで、今年中

にジョン・エリオット・ガードナーの指揮で演奏される事が決まっているそう

です。

 

司教ジョン・アントン・ミリウスの書いた詩が当時発行されており、その詩に

バッハは作曲した、ということです。オリジナルの楽譜にはバッハの署名は無

いそうですが、ハーバード大学に保管されている1713年のバッハの手書き

であるカノンの部分が同じであるそうです。

 

2004年の火事の時に運び出されていなかったら、日の目を見なかった楽譜

であった、ということです。

http://www.hz-online.de/index.php?mode=full&cat=172&minDate=&begin=0&id=123494

 

 

 

バッハのオリジナルが見つかったと報道される2時間ほど前にミュンヘンでは

国立図書館からヘンデルのオリジナルの楽譜が見つかった事が発表されていま

した。

 

芸術関係の歴史学者ウィルヘルム・ハインリッヒ・フォン・リール(Wilhelm

Heinrich von Riehl)の書籍にはさまれていた楽譜を音楽学者ベルトホルト・

オーバー(Berthold Over)が発見。既に知られているオーボエと弦楽伴奏の

の為のソプラノソロ・カンタータ「Crudel tiranno Amor」が、ヘンデルの自

筆によりチェンバロ伴奏に書きかえられている楽譜だそうです。ドイツのハレ

のヘンデル専門家もヘンデルのオリジナルに間違いない、と証明しているそう

です。

http://www.swissinfo.org/sde/swissinfo.html?siteSect=203&sid=5851224&cKey=1118154676000&ticker=true

 

 

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■ ブレーメンの美術館ではオリジナル・ムンク   

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ブレーメン美術館所有のムンク(1863−1944)作品を修復する為にレ

ントゲン写真にかけたところ内側に別の絵があることが分かったそうです。

 

1918年、ブレーメン美術館は2万マルクで「母の死」を購入。当時ムンク

を購入したのはドイツの美術館では初めて。修復の為に絵を額から外し念の為

にレントゲンをとったところ、「母の死」の作品の下にさかさまに別の絵があ

ることを確認。20年前に行われた検査では、下の絵は上の絵の補強の為と診

断していた、そうです。

 

発見された絵は油絵で「少女と3つの男の頭」とブレーメン美術館が命名し、

現在、ブレーメン美術館(Kunsthalle)に展示されています。

 

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■ 今が旬の食べ物 マッチェス

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5月終わりから6月始めにかけてのニシンは油がのっていて、卵が出来る前の

状態です。そのニシンを中世期ごろから塩漬けにして食すようになりました。

この時期に捕れたニシンの頭を落とし皮を剥いで5,6日樫の木で出来た樽で

漬けられた物です。

 

こちらの方はパンにマッチェスとたまねぎの薄切りをはさんでサンドイッチに

して召し上がります。私の住むブレーマーハーフェンは北海に面した港町です

から、もちろん新鮮な魚が手に入ります。塩漬けにされたマッチェスも簡単に

入手できます。この時期にはよくスタンドで売られているマッチェス・サンド

イッチを食べます。

 

我々日本人にはこのマッチェス(Matjes)を別の方法で食べることが出来ます。

一口大に切りお刺身としてわさび醤油で食べる方法です。パンにはさんで食べ

るのと違い、醤油をたれとして使いますからそのままでは少々塩辛いので、少

し水で塩抜きを致します。

 

ドイツの内陸にお住まいの方は新鮮なお魚には苦労されていることと思います。

マッチェスは真空パックにされたものもございますから、内陸の方は生より真

空パックのマッチェスを求められた方がよいかもしれません。しかし、今が旬

のマッチェスかどうか?

 

http://www.matjes.nl/index.htm 

(スタートサイトの写真でどんなものかお分かりいただけます)

 

http://www.5th-season-chapter.de/bilder/pictures/2003/hoek/26_Matjes1.JPG

http://www.wdr.de/tv/service/essen/inhalt/20040611/bilder/03.jpg

(このようにマッチェスだけをつまみ食う方法が一般的?)

 

 

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■ ドイツの銀行、再編成

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6月13日、イタリアのウノ・クレディット銀行がドイツで2番目に大きなヒポ・

フェルアイン・バンクを吸収合併することが発表されました。これでヨーロッパ

9番目の銀行、そして東ヨーロッパ関係への投資銀行の筆頭になるそうです。

 

その関係でポーランドの国内では、競争力を強める為に自国の銀行同士の合併が

急がれている、という話です。

 

現在バンク・オブ・スコットランドやBNP・パリバ、ソサエティ・ジェネレル

などの銀行がドイツの銀行の吸収を企ているようです。これに伴い、現在ドイツ

の銀行株は上昇中。

 

ヨーロッパの銀行の動きでは、オランダのABNアムロ銀行がアントベネタ銀行

Banca Antonvenetaと書いてあるので、イタリアの銀行でしょうか?)を買収中

だそうです。

 

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■ ドイツの政党、再編成

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PDFとBASGの2党が合併を発表しました。秋に前倒しされるかもしれない

ドイツ首相選挙戦への動きの一つです。PDFは元東ドイツの政党をそのまま継

承した左よりの政党でグレゴ・ギージーが党首。BASGについては私は今まで

聞いたことの無い政党ですが、シュローダー政権が確立したときに大蔵大臣に就

任し、後に喧嘩別れとなり与党SPDから離党したオスカ・ラフォンテーンが党

首。

 

7月1日には、ドイツの現首相シュローダーが、今後の政策についてはっきりと

判断を下すことになっています。内閣解散し顔ぶれを新しくして来年まで乗り切

るか、今年の秋に選挙を前倒しにするか、或いは別の手立てを企てるのか?

 

 


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