バックナンバー:189 2010/11/1


読者の皆様、お元気でお過ごしでしょうか? 

 

日本は急に寒くなり秋を飛び越して冬に、そして季節はずれの台風と、天候が

大荒れのようですね。どうぞ体調を崩さないように注意をしてお過ごし頂きた

いと思います。

 

今回のメールマガジン、分量が大変多くなりました。部分的に2週間後のメー

ルマガジンに回せば、とも考えましたが、そうするとタイムリーであるはずの

インターネット情報にカビが生えそうなので、後に回さない方が良いテーマは

全部載せる事に致しました。どうぞ時間をかけて、何回かに分けてお読み頂け

ればと思います。

 

ドイツは10月31日から冬時間に戻りました。これで日本との時差は8時間。

ドイツの正午は日本で午後8時です。最近の天気は良いのですが、だんだんと

日が短くなってきました。朝8時ごろでもまだ薄暗い感じです。

 

チリで地震災害の後コレラが発生しています。水の供給が十分でなかったので

川で洗い物をしたり水浴びをしていた為に集団発生した模様です。水は怖いで

すね! またインドネシアの火山が爆発。一時航空ダイヤを大幅に乱したアイ

スランドの火山は今のところおとなしいようですが、インドネシアの火山で航

空機への影響は大丈夫なのでしょうか?

 

ヨーロッパの国々は来年度予算へ向けていろいろな経費削減案を出しています。

フランスは年金問題。ドイツはエコ・エネルギー。ドイツ政府は今までエコ・

エネルギーに対して税金の値上げを計画していましたが、10月25日にそれ

をくつがえし、タバコの税金を値上げする事になりました。エネルギー関係の

ロビー活動がタバコ業界より強かった、とニュースは報道しています。

http://www.n-tv.de/politik/Oekosteuer-Deal-veraergert-Opposition-article1783406.html

 

ドイツ鉄道(DB)がフランクフルトからロンドンへの直行列車を走らせる事

になりました。DBの説明ではこの路線区間を4時間以内で結ぶそうです。ヨ

ーロッパ内は格安の航空料金て飛べる為、鉄道路線も低価格競争、サービスに

必死です。

 

ベルリンに新しく高層ビルが建ちます。

http://www.n-tv.de/mediathek/videos/panorama/Berlin-bekommt-ein-neues-Wahrzeichen-article1773406.html

 

ヴィクトリア・コレクションで2000000ドルのブラジャーがお目見えし

ました。宝石がちりばめられたこのブラジャーを着たモデルの回りをガードマ

ンが固めています。強盗が現れ、ブラジャーを剥ぎ取ったら、ガードマンはモ

デルを守るでしょうか、ブラジャーを追いかけるでしょうか?と余計な推測を

してしまいます。

http://www.n-tv.de/mediathek/videos/unterhaltung/Der-Zwei-Millionen-Dollar-BH-article1760556.html

 

イギリスのオークションハウス・ソーズビーが中国で絵画を中心にオークショ

ンを行います。

http://www.n-tv.de/mediathek/videos/panorama/Picasso-soll-China-verzaubern-article1770736.html

 

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■ 日本音楽コンクール結果 

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音楽家の登竜門、第79回日本音楽コンクール(毎日新聞社、NHK共催、特

別協賛・三井物産)の決勝結果が発表されました。第1位は近藤那々子さん=

独・カールスルーエ音大。彼女は先回のソニー主催の国際音楽オーボエコンク

ールで奨励賞を受賞されています。「おめでとうございます。」

これからが楽しみな方ですね。

http://mainichi.jp/enta/art/oncon/news/20101029ddm041040084000c.html

 

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■ ミュンヘンコンクール2011年、オーボエの課題曲

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ミュンヘンコンクールの課題曲が出されました。申し込みは3月31日まで必

着。参加資格は1982年から1994年に生まれた人。コンクールの期日は

8月29日〜9月16日。詳細は下記のホームページをご覧ください。

http://www.br-online.de/content/cms/Universalseite/2010/10/04/cumulus/BR-online-Publikation-ab-01-2010--226506-20101004083009.pdf

 

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■ オランダ政府が音楽関係部門の閉鎖を検討

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新しいオランダ政府はオランダ放送の音楽部門の閉鎖を検討しています。対象

に上がっているのはオランダ・ラジオ・フィルハーモニー、オランダ・ラジオ・

室内オーケストラ、オランダ放送合唱団、音楽図書館、音楽教育部門。それか

らアムステルダム、ウトレヒトを中心に流されているテレビ、ラジオ放送、オ

ンラインを始め、オランダフェスティバル、ピンクポップフェスティバル、北

海ジャズフェスティバルなどの後ろ盾も失われます。

この政府案に反対しサー・サイモン・ラッテルの提唱で署名運動が開始されて

います。右側の署名欄に名前とメールアドレス、(メッセージ)を書き込み送

信して署名に参加できます。

http://www.mco.nl/mco_page/actie/eng/

http://bibliothek.musikhochschule-muenchen.de/images/PDFs/Aktuelles/mco_actieflyer_deutsch.pdf

 

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■ スパムメール

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ハンブルクの弁護士ギーゼからドイツ中にスパムメールが発信されました。内

容は「不法なダウロードをしたので警告します。IPアドレス・・・。ダウン

ロード内容はMP3が・・・・など。無用な裁判を避ける為に100ユーロを

送金するように。」というものです。ハンブルクの弁護士ギーゼは存在します

が、そのようなメールを出した覚えは無いと、名前が分かっていない詐欺師を

訴え、メールアドレスを変更したそうです。この手紙を受けた人はゴミ箱へ、

既に支払ってしまった人は警察か検察に届け出るように、との事です。

http://www.n-tv.de/technik/Abzocke-mit-Abmahnungen-article1768606.html

 

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■ 電話、インターネット、テレビのトリプルサービス

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ドイツでは電話、インターネット、テレビをセットにしたサービスが増えてい

ます。色々なパターンがあり、内容と料金を比べるのは難しいです。今回、ド

イツのテレビ局NーTVが発表したテストによると、電話とインターネットは

定額制が普通になっており、テレビのサービスが付き、会社の対応と料金がど

うなっているか、で違いが出ているようです。一番良かったのがカーベル・バ

ーデン・ヴュルテンブルク(Kabel Baden-Wuerttemberg)、次がエリス(Alice)

次がカーベル・ドイッチュランド(Kabel Deutschland)なんだそうですが、サ

ービスは良いが料金が高いとか、安いけれどテレビの局数が少ないとか、サー

ビスもテレビの質も良いが契約が2年とか?比べるのは容易ではありません。

やはり自分で何が必要かを決めるのが一番だと思います。ちなみに私はエリス

と電話とインターネットを契約しています。エリスには他の会社に無い、ホー

ムページのスペースがあります。また、日本への電話の定額制がオプションで

あるのです。そしていつでも解約できるという利点があります。もしドイツで

どなたかエリスを選びたい方がいらっしゃったら私にご一報ください。紹介が

あると、新しい加入者には20ユーロの特典が付きます。

http://www.n-tv.de/ratgeber/Triple-Play-Angebote-im-Test-article1763361.html

 

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■ ドイツ電気自動車600キロ完走

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エネルギー関係のニュースではドイツの技術者が開発した電気自動車が600

キロ(ミュンヘン〜ベルリン)を途中充電しないで完走したそうです。このエ

ンジンは普通のアウディに積まれ、最高時速130キロだったそうです。世界

はガソリン車から電気自動車へ流れが変わってきています。リチウムの需要が

これからも増えそうです。スイスのUBSから出されているリチウム・バスケ

ットという商品がありますが、かなり良いパフォーマンスです。

http://zertifikate.onvista.de/snapshot.html?ID_INSTRUMENT=28849913&SEARCH_VALUE=UB1LTH

 

日本でも注目されているリチウム関連株ですが、イギリスでも関心は高いよう

です。

http://www.moneyweek.com/investments/commodities/two-ways-to-play-the-lithium-boom.aspx

 

リチウムの最大の原産国はボリビアです。ボリビアの政情が不安定な関係でア

メリカの銀行はボリビアに投資をしようとしないそうです。専門化の意見では

リチウムに投資したい場合は、長く研究に携わっていた南アメリカの会社を優

先すると良い、例えばチリのSQM、アルゼンチンのFMC、或いはRockwell Holdings

を挙げています。

http://www.dasinvestment.com/investments/gruenes-geld/news/datum/2010/02/22/elektroauto-boom-jetzt-in-lithium-investieren/

 

上記3社の株価

http://aktien.onvista.de/snapshot.html?ID_OSI=89481

http://aktien.onvista.de/snapshot.html?ID_OSI=87130

http://aktien.onvista.de/snapshot.html?ID_OSI=12661961

 

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■ 世界の市場ランキング

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世界の市場はたくさんあります。どこが国際的な市場か、というランキングが

ありました。ロンドン、ニューヨークがトップの座を占めているのはうなずけ

ます。驚きなのはアジアが市場として頑張っている事です。でも、出来高で見

れば高いのかもしれませんが、いろんな商品を購入できるという面をみると、

私にはヨーロッパ市場の方が魅力的な気が致します。

http://www.handelsblatt.com/finanzen/boerse-inside/finanzplatz-ranking-asiaten-sagen-london-und-new-york-den-kampf-an;2659044#bgStart

 

第1位 ロンドン 

第2位 ニューヨーク

第3位 香港

第4位 シンガポール

第5位 東京

第6位 上海

第7位 シカゴ

第8位 チューリッヒ

第9位 ジュネーブ

第10位 シドニー

第11位 フランクフルト

第12位 トロント

第13位 ボストン上海

第14位 深川

第15位 サンフランシスコ 

第16位 北京

第17位 ワシントン

第18位 パリ

第19位 台北

第20位 ルクセンブルク

 

ところが、10月25日にシンガポールの株式市場がオーストラリアの株式市

場を吸収合併するというニュースが流れました。実現すると世界で1位の出来

高の市場になります。

 

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■ フランスの年金問題  

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フランスでは年金生活に入る最低年齢を60歳から62歳に引き上げる。また

払い込みの少ない人が年金をもらえるのが65歳から67歳に引き伸ばす。年

金の積み立ては今まで 給料の7,85パーセントだったのが、10,55パーセントに

引き上げられます。年金の額は公務員が最後の給料の4分の3、一般は半分、

等が10月22日に可決されました。この政府案に反対するデモが続き、鉄道

などの公共の交通機関だけでなく、トラックなどの輸送機関、石油コンビナー

トも操業が停止し、ガソリンスタンドの油がなくなったり、飛行機に給油する

為の油も切れると言う事態に陥っていました。パリやリヨンではデモの為の暴

動が続き警察隊と衝突。アメリカの歌手レイディ・ガガはパリでの2階のコン

サートをキャンセルしました。この政府の決定により、サルコジ大統領の支持

率は最低なんだそうです。

http://www.n-tv.de/mediathek/videos/politik/Blockade-gewaltsam-aufgeloest-article1768726.html

http://www.handelsblatt.com/politik/international/umstrittene-rentenreform-sarkozy-hofft-auf-protest-ferien;2677130

 

年金問題は老人が増え続けている先進国では難しい問題です。政府にとっては

増え続ける老人に対して支払う年金が財政を圧迫します。若い人の年金負担は

増大します。そして、年金生活に入る年齢が引き上げられれば、それだけ若い

人に回る職場がブロックされます。(このブロックされる職場も引き上げられ

た年金開始時期が定着すれば定年退職者の方が職を探している若い人よりも多

くなりますから、今、現在は問題かもしれませんが、将来的には若い人の職場

を奪うという事はないと思います。)現在の先進国の年金制度は、若い人が多

く、老人が少ないという人口ピラミッドを条件として作られました。ですから

年金問題を解決しようと思うと人口ピラミッドを改善しなければいけません。

フランスは最近働く女性の条件改善をしながら出生率を上げています。

 

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■ ヴゥルフ・ドイツ大統領がトルコ議会でスピーチ

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10月19日トルコの議会でドイツの新大統領ヴゥルフがトルコの国会でスピ

ーチをしました。現在ドイツではイスラムの国からの移民受け入れを制限する

風潮の与党政治家発言が続いております。発言したのはミュンヘンCSUのゼ

ーホファーとメルケル首相です。内容はドイツ文化(キリスト教文化)に溶け

込めないイスラムからの移民を制限するべきである、とかムルティ・クルティ

Multikulti)政策は失敗であった、という発言です。

http://de.news.yahoo.com/blogs/allgemein/merkel-befeuert-multi-kulti-debatte-p133401.html

http://www.sueddeutsche.de/politik/cdu-multi-kulti-debatte-die-rueckkehr-des-untoten-1.1013416

http://www.ad-hoc-news.de/neues-deutschland-zur-multikulti-debatte--/de/News/21665344

http://www.handelsblatt.com/politik/deutschland/westerwelles-indien-reise-multikulti-debatte-im-koffer;2676395

 

ムルティ・クルティとはmultikulturellの略で、複数の文化政策、つまり移民

政策を指し示す代名詞としてニュースで扱われています。ドイツは国政として

移民を受け入れました。戦後の復興期にスペイン、トルコからたくさんの移民

を受け入れ、現在はその3世の時代に入っています。また、ユーゴスラビアが

分裂した時も、ルーマニアが崩壊した時も、そして東欧諸国が崩壊した時もポ

ーランド、ロシアなどから多くの移民を受け入れ続けました。

 

夏にフランスがロマ民族(ジプシー)を国外退去、強制送還し、各国から非難

を浴びていました。メルケル首相の今回の発言はそのようなEUでの国際外交

の延長上にあるようです。

 

そんな中でのドイツの新大統領ヴゥルフのイスラムの国トルコ議会のスピーチ

ですから両国から注目されていました。ドイツ大統領ヴゥルフは新任早々「ド

イツはイスラム民族の国でもある」発言していました。

 

この日の発言はトルコを擁護する姿勢で始まり、ドイツに住むトルコ人にドイ

ツ語を勉強して欲しい事、それからトルコもキリスト教文化の国である、ドイ

ツ政府の与党とは正反対のムルティ・クルティの発言をしています。

 

トルコはEUに加盟する、という大きな政治的目標を持っており、ドイツやE

U諸国の重要な政治家の発言には神経質になっています。新大統領ヴゥルフの

トルコ議会のスピーチはトルコ議会とトルコ国民にとっては大歓迎であったと

思います。

 

現在ドイツ国内で、内政問題として移民問題が問題化していることは事実です。

仮にトルコが希望しているように、もしEUにトルコが加入する事になると、

トルコ人はフリーパスでEU諸国で仕事ができるようになります。そうなると

今ドイツで起こっている以上に問題が膨らむ可能性を秘めています。

 

今まで日本は単一国家で移民の受け入れも制限されており、今のところコント

ロールが効いています。ドイツは確かに移民民族に支えられて国を復興しまし

た。しかしその復興はプラス面だけではなくマイナス面もたくさんあります。

日本で民主党が大手を広げて推進しようとする中国からの移民計画はドイツ以

上に危険を伴うはずです。究極的には国の存亡にも関わってくる問題だと思い

ます。現在ドイツ与党は社会の底辺にはびこっている移民に払っている失業手

当などの税金を減らし社会保障を必要としないエリートの外国人の働き手だけ

を歓迎している、というのが現状です。

 

20101018日付 Hurriyet紙(トルコ)

http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=20435

 

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以前にご紹介しました無料メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」の北

野氏が「3K移民大量受入れで何が起こる?」をテーマにどうして3K移民が

日本にとって危険な事なのかを非常に分かりやすく説明されております。是非

No.6852010/10/26号をご覧ください。

http://www.mag2.com/m/0000012950.html

 

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■ オーボエ演奏のコツ (解釈と歴史的背景)

ドイツ・バッハ・ゾリステン50周年記念演奏会を聞いて

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10月16日にパダボーンで行われたドイツ・バッハ・ゾリステンの50周年

記念演奏会に行ってきました。パダボーンは大学の町で、私が学生の頃、教育

学部の音楽の専門授業にデトモルトの学生が多数教えに行っていました。私も

2年間パダボーン大学でオーボエを教えに行っていた懐かしい町です。

 

この日演奏されたプログラムはバッハ作曲、ヴィンシャーマン編曲によるゴー

ルドベルク変奏曲。演奏会は18時から始まりました。会場になったカイザー

プファルツの隣がドームで19時に鐘が20分なり続けるそうなのです。その

間を休憩にするという配慮で演奏開始時間が決められたようです。デトモルト

からはヴィンシャーマン教授の後を継いだシュマルフス教授の、またその後任

のハンガリー人のキーシュ先生がオーボエクラスを引き連れて聞きに駆けつけ

てくれました。

 

さて、19時になっても鐘は鳴り始めないので、後半を始める為に19時15

分頃にメンバーと指揮のヴィンシャーマン先生がステージに上がりました。そ

の瞬間に鐘が鳴り出したのです。係りの人があわててヴィンシャーマン先生に

駆け寄り「きっと鐘は長い間鳴っている。」という事を告げていました。ヴィ

ンシャーマン先生は機転を利かせておしゃべりを始めました。

 

バッハの作品を編曲する、という事を「冒涜」とか「してはいけない」なんて

言わないでください。だってバッハ自身がしょっちゅう行っている事なのです

から。バッハ自身ががチェンバロ協奏曲からヴァイオリン協奏曲に編曲してい

ます。そしてそのヴァイオリン協奏曲は完全にヴァイオリン協奏曲として定着

しているのです。当時はGEMA(著作権協会)もなく、良い音楽を色々な編

成に書き換えて演奏すると言う事は日常茶飯事でした。重要な事は如何にその

音楽を表現するかで、音楽大学で勉強しただけですぐにできると言うものでは

なく、(デトモルトのオーボエ科の学生さんたちに向かって言われたのだと思

います。そして冗談を交えて)90歳くらいになってやっとできる事です。最

後に「そうだよな圭志!」と一言おっしゃって、瞬間的に「Ja!」とは答え

たものの、会場からもステージの演奏者も含めて一瞬私の方に視線が集まり往

生しました。

 

そういうことをお話しなされている間に鐘が鳴り止み後半の演奏が始まりまし

た。演奏の途中ハプニングが起こり、チェロとオーボエがずれ始めました。し

ばらくしてヴィンシャーマン先生が、「バッハの音楽は複雑です。非常に和音

が入り組んでいて聞き分けるのが困難だ、と思った方がいらっしゃるかと思い

ます。でも、今のは違います。単純に演奏間違いですのでもう一度このバリエ

ーションをやり直します。」と聴衆に語りかけ、再度演奏が再開しました。

 

演奏会終了後、知り合いの聴衆の方々、その後のパーティーでヴィンシャーマ

ン先生ともお話しするチャンスがありました。

 

聴衆の方々のご意見は、この曲のオリジナルをチェンバロやピアノで聞くと、

途中で休憩したくなるけれど、今日の室内楽の演奏はまったく飽きない。それ

どころか楽しく音楽に溶け込んでいける。今日の演奏会はヴィンシャーマン先

生が編曲の経緯をお話してくれた。また、ずれても、始めから計画していたよ

うに演奏を停めて聴衆に語りかけて演奏をやり直す。こういうことはライフし

か起こりえない事であり、また普通の演奏会では体験できる事ではなく、聴く

ことができて良かった、というものでした。

 

ヴィンシャーマン先生が後に私に言われた事は、「バッハとモーツアルトの音

楽は濁っていてはいけない。ああいう状況ではやり直しが一番良い。」とおっ

しゃっていらっしゃいました。私事ですが、この日の演奏会の少し前、10月

11日にブレーマーハーフェンで開いたオーボエトリオの演奏会のアンコール

でバルトークのルーマニアダンスを演奏したのですが、私が1拍間違えて入っ

てしまったのです。ずれたのは少しです。途中修正して最後まで演奏しました。

でも、メンバーにお願いして、そして聴衆には「気に入らなかったのでもう一

度演奏します。」と説明し、もう一回同じアンコールの曲を演奏し直したので

す。勿論完璧な演奏していればやり直しは必要ありません。やり直しに対して、

オーボエトリオにしても、バッハゾリステンの演奏会にしても聴衆は非常に寛

大です。やり直しの為に時間がたくさんかかる、というのであれば演奏する側

も躊躇しますが、少しの時間で修正が効くのであれば、やり直しも良いのでは

ないかと思っています。皆さんは聴衆として、或いは演奏家としてどのような

ご意見をお持ちでしょうか?

 

デトモルトの音大生に語りかけたり、日本での講習会で先生がおっしゃりたか

った事は、音楽大学で学べる事は全体の一部に過ぎない。大学で勉強した事を

ベースに如何に音楽と接していく事が大事であり、30歳、40歳、90歳に

なってもその創作作業の追及の手を休めてはいけない。だから私にも頑張りな

さい、というメッセージを頂きました。

 

この日のオーボエを担当した73歳のゴリツキの演奏は素晴らしかったです。

2人の優秀なお弟子さんと、元デトモルトファゴット科の教授へルマン・ユン

クを管楽器のパートリーダーとして音楽的に引っ張りながら、相変わらずの完

璧な指のテクニックと細かい音楽の表現は聴衆を魅了しました。

 

素敵な音楽を聞くだけでなく、いろいろ考える事のあった、そして勇気と新し

い元気を頂けた貴重な演奏会でした。

 

演奏家にとって、立ち止まらない、前を向いて考える、というのは上手になる

資質(コツ)だと思います。

 

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最後までお付き合い頂きありがとうございました。

どうぞ皆様お元気でお過ごしください。

 


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