バックナンバー:43 2003/09/13


皆様こんにちは、

 

既に新しいシーズンに突入し、歌劇場ではまた新しい曲に取り組んでおります。

と、申しましても、私にとっては本当に今までやった事も無い曲、というのは、

年々少なくなってきております。まず最初に来るオペラ、「ティーフランド」

(ダルバート作曲)も既に一度演奏しております。ダルバートという作曲家・

ピアニストはリストの弟子で、ヴァイオリンのサラサーテと組んでアメリカ演

奏旅行で大好評を得た人だそうです。9月の終わりにあるシンフォニーコンサ

ートの「展覧会の絵」(ムソルグスキー作曲、ラベル編曲)も記録はしており

ませんが、もう2桁に入るくらいの経験があります。

 

この「展覧会の絵」、はテクニックが必要な曲で、いたるところに難所があり

ます。私がオーケストラに入ってこの曲を演奏した時は兎に角、お恥ずかしい

話ですが、ソロの部分だけを完璧に演奏する事に精力を使い、他の部分の難し

いパッセージをこなす余裕がありませんでした。幸い2番オーボエとユニゾン

の箇所が多かったので、テクニシャンの同僚に助けられました。

 

4月ごろ今シーズンの曲が発表になったら直ぐ、テクニックの難しい曲をチェ

ックしました。そして難しいパッセージの練習を開始します。それでも時間の

制限があり、部分的に完璧に指が回るかどうか不安な箇所が残ります。

 

「展覧会の絵」に関しては、22年間のプロ生活で何回も演奏し、その不安も

徐々に消えつつありますが、それでも難曲であることには違いなく、いつ何が

起こっても不思議でない曲のひとつであります。

 

現在、今シーズンの為に毎日楽譜を見て、ゆっくりとさらっている曲は、この

他にオペラ「オテロ」(ベルディ作曲)と「バラの騎士」(R.シュトラウス

作曲)です。「オテロ」は今年の12月に、「バラの騎士」は来年の4月に開

演されます。

 

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■ 日本の気候

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まだ、梅雨のお話か!とおっしゃられるかもしれませんが、今年の夏休み中の

帰国で、困った事を特筆してみます。

 

長梅雨で、私が帰国した7月16日は曇り空。身体の方はそんなに不快感はな

かったのです。しかし、いざ楽器を演奏、という段階で、非常に驚きました。

リードは、除湿でそんなに重くなる、とか息が入りにくいとかの症状を回避で

きる事は、承知しております。今回ももちろん練習室をあらかじめ除湿、冷房

も少し入れ、環境を作ってから楽器のトレーニングに入りました。

 

私の体質の変化なのか、気候なのかは分かりませんが、兎に角、指がべたつく

のです。これには大変困りました。ゆっくりのパッセージを演奏するのには何

の障害もありませんが、早いパッセージの演奏では、指が上に上る速度を著し

く妨害してくるのです。要するにキーから指がうまく離れない。キーにチュー

インガムが引っ付いていて指をキーから離すのに悪戦苦闘を強いられる。ちょ

っとオーバーな表現ですが、症状を分かりやすく説明するとこのようになりま

す。キーを拭いて、手を洗いなおしても、まだべたべたが治らない。こういう

状況でした。

 

そんな事を気に病んでもいても仕方がないので、練習を続けましたが、今年の

梅雨はひどっかたのでしょうか? 元来私はあまり汗をかかない体質でした。

日本での学生の頃はこういう季候でも、割と手はさらさらとしていて、友人た

ちが今回私が陥った症状を訴えた時でも、まったく支障を感じた事は無かった

のです。

 

ヨーロッパの乾燥している場所に住みだして、体質が変化した事もあるのでし

ょうが、今年の梅雨は異常だったような気がしております。

 

皆様は如何でしたか?

 

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■ ドイツの気候

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夏の猛暑で主食であるジャガイモの出来が悪いそうです。量的には例年に比べ

15パーセント少なく、価格はその為に50パーセント上るそうです。

(ほんとかよ!!!!)

 

ジャガイモの質が悪く、ポテトチップの品質を保てないのでは、と業者はこぼ

しているそうです。

 

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■ シャルケ04

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ドイツのサッカーファンならご存知の名門チームシャルケ04の本拠地のサッ

カー場で9月6日にオペラ「カルメン」が上演されました。

 

イタリアのベローナにならって、野外の大スペクタクルという事です。切符も

サッカーの試合とコンビで売られている(全部ではありません)らしいです。

サッカー選手が群集に混じって、カルメンを演じるかどうかは定かではありま

せん。従って、サッカーファンが、憧れのプレイヤーを見に「カルメン」を聞

きに来るのかどうか・・・・・・?

 

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■ Pirelli、イタリアのタイヤ会社が冬の天気に賭けを・・・

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イタリアのタイヤの会社が冬タイヤを売る為に賭けを始めました。

 

2003年11月15日から2004年2月29日までの期間で、少なくとも

日中平均気温が7度以下の日が北西ドイツ地区では67日間、南東ドイツ地区

は77日間なければ、この勝負会社の負け。条件は2003年10月30日ま

でに、冬タイヤを買い、規定数より暖かい日が多かった場合は、その日の数に

より25、あるいは50パーセントの代金を返却する、というもの。

 

問題が起こった場合はドイツの代表的な車のクラブ、ADAC が判定に協力する

事に決まっている。

 

会社側はこの賭けにより冬タイヤのシェアを伸ばそうと意気込んでいますが、

果たして思うように儲かるかどうか?

 

私の当てにならない推定では、この賭け、会社側の勝ちです。賭けの期間は全

部で106日ありますが、日中の平均気温が7度以上の日はそんなにありませ

ん。特に夏が暑いと冬が寒くなる傾向があるようですので、私ならこの賭けの

為にピレルリのタイヤにしようとは思いませんが・・・・。もともと、私は、

冬タイヤに変えた事がないので、冬タイヤを買おうとはしませんから、賭けは

会社の勝ち、例え会社側が負ける確立が高くても買わない、ってなところです

ね。

 

しかし、ドイツ人はこういう商売好きなんですかね?

 

以前、WM の時に、ドイツチーム入れた1点ごとにいくらだったか安くする、

という会社があり、初戦にいきなり4点くらい入り、会社はこの安売りをすぐ

撤回。決勝までドイツチームは行きましたから、もし、この賭けを会社が続け

ていたら、きっとその会社潰れていましたよ。(この件に関しては、当時のメ

ールマガジンに書きました。詳しくお調べになりたい方は、バックナンバーを

ご覧ください。)

 

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■ 第9回浜松国際管楽器アカデミーに参加して(その2

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誰でも参加できる夏の講習会はヨーロッパではかなり行なわれております。そ

れが日本で受けられる。何とすばらっしことでしょうか!

 

我々が学生の頃は、このような、ヨーロッパ、アメリカから一流の教授陣を日

本に招待して講習会が行なわれる事はなかったので、今、楽器を勉強される方

は大変幸せだと思います。夏の講習会といえば、国立音楽大学や武蔵野音楽大

学などが行なう、大学受験生の入試準備の為の講習会ばかりでした。高校生時

代には、私もこの講習会のお世話になりました。講習会が催された大学の受験

はいたしませんでしたが、それでも大変勉強になった事を覚えております。

 

しかし、大学に入ってからは、残念ながら講習会が無く、一部の先生方が合宿

を行なっていらっしゃいましたが、存じ上げない先生の合宿に参加する事は不

可能でしたから、現在の日本の状況は、音楽を学びたい方にとっては素晴らし

い環境になってきた、と思います。

 

今回の講習会では、講師陣の演奏会が初日にございました。この様な演奏会は

普通、聞く事ができません。ある演奏者がリサイタルを開く、とか何人かが集

まっての室内楽の演奏会、これならありえます。オペラ歌手が数人集まって行

なわれるガラコンサートもソリストは数人です。

 

一晩に世界的なソリストが10人以上出演したこの日の演奏会は、「素晴らし

かった」の一言につきます。この晩、8月1日に「オープニングコンサート」

と「打楽器コンサート」の2つのコンサートが違うホールで平行して行なわれ

たのは、両方の演奏会を聞きたかった私には残念でした。

 

来年は浜松国際管楽器アカデミーが10回を迎えます。主催者も10回記念と

して、力を入れてくると思いますので、どんなメンバーが組まれるか大変楽し

みですね。オープニングコンサートだけを聞きに、浜松まで出かける価値がき

っとあると思います。

 

そして、講習会。

 

この様な世界的な先生のレッスンをじかに受けられる、見られる。しかも通訳

つきで!!!! レッスンの無い時は、お話も伺える。

 

私が学生の頃は、外国からオーケストラが来たら、よく演奏会に聞きに行きま

した。演奏会後、楽屋まで押しかけていき、リードを見せて頂いたり、場合に

よってはホテルまで行き、少しでしたがレッスンして頂いたりしたものです。

 

講習会では先生との時間がたっぷり在ります。音楽に対する先生の姿勢、奏者

として普段気をつけていらっしゃること等をじっくりお聞きしたり観察する事

ができます。レッスンを直接受けられればもっと良いわけですが、他人のレッ

スンを聞く方が勉強になる事もあります。レッスンを聞いただけでうまくなっ

たような気がする、そんなうまい話は無い、と思ったら大間違いです。先生の

指摘された事を把握できれば、あなたの音楽的感性が向上した事になります。

また、テクニックを盗む事も出来るわけです。

 

講習会はもちろん、時間がたっぷりある、と申しましても、今回の一人当たり

のレッスン時間は4時間でした。それが、5日間に凝縮されていますから、言

われた事を次の時間までにさらいこむ事は難しい事です。正直なところ1曲も

仕上げる事はできないのです。

 

問題は、受講生が、聴講生がそれを今後どのように生かしていくかです。この

6日間で学んだ事を全てそのまま鵜呑みにすることはないのです。もし、講習

会だけでなく、高校でも、大学でも良いのですが、レッスンを受けて先生のお

っしゃる事だけを忠実に行なう事を考えていらっしゃったとすると、ひとり立

ちできません。そういう方は先生がレッスンしなかった曲は演奏できない事に

なります。ですから、先輩諸氏のおっしゃられ事をたくさんお聞きし、自分な

りの方向を探していくことが、大切です。

 

あなたの目の前に材料と調味料があります。もしあなたが、料理方法を一つし

か知らなければ、いつもその一つの料理を作り召し上がる事になります。いろ

んな調理方法を知っている方は、それだけ料理をする選択範囲が広がってまい

ります。さて、プロは、と申しますと、自分の独自の料理方を探します。その

料理方を探すのにも、知識と経験だけでなくセンスとテクニックが必要な事は

申し上げるまでも無いと思います。

 

講習会は料理のテクニックを短期間で学ぶ事はできませんが、知識とセンスに

関しては充分学べます。あなたの「脳内革命」をしていただければそれでよい

訳です。

 

今年の夏休みに、我が娘たちもドイツで講習会に参加いたしました。レッスン

で先生に言われた事を、次のレッスンまでに直す事も大変だったようです。そ

の為に冷房施設もない30度以上の部屋で6時間も7時間も練習を積んだこと

も重要でしょうが、音楽への取り組み方に関して大変なショックを受けて帰っ

てきたようです。良い先生方の音楽的パワーの暗示にかかった、と表現したら

良いのでしょうか?

 

この素晴らしい暗示がいつまで続いてくれるのか?というのが親の気になる所

なのですが・・・・。

 

(次号に続く)

 

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