バックナンバー:32 2003/03/03


皆さん、こんにちは。

 

イラク問題では毎日めまぐるしい変化ですが、世論が戦争反対を強め、政治が後

から対応している感じがします。イギリスではとうとう議会が政府の方針に反対

を表明。イラクはミサイルの解体に同意。トルコはアメリカ軍のイラク出撃に同

意しない意向を検討中。アメリカも国連の検査官への時間的余裕を再度検討。等

のニュースで戦争回避への可能性は高まってはいます。それとは別にフセインの

独裁により、民衆からの搾取に関してユニセフが非難しています。もちろんユニ

セフは戦争には反対していますが、子供の生命がこの11年間奪い続けられてい

るとし、民衆の独裁政権に外部からの圧力で終止符を打つよう働きかけています。

ドイツのアラブのある特派員は戦争でフセイン政権を倒し、民主化を進める事は

難しい。返って内戦が起こり、イスラエルを含めて政局不安を増す可能性が高い

と述べています。ドイツは依然として政治的解決を進める姿勢を強めています。

 

さて本日のテーマはイラク問題からオーボエの不調に関する問題点に戻ります。

<その1>、<その2>では主に水に関する問題点に焦点を絞っていました。水

に関しての問題はほとんどが上管で発生いたします。下管でこのような問題が起

きた場合は、楽器をすぐ掃除することでほとんど解決します。下管での問題は主

に音が出にくくなる、ピアニッシモが出せない。という具合です。今回はその下

管に問題が生じやすいキーについて見当を重ね、少しでも問題点を解決していく

手がかりにしていただければと思います。

 

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  楽器の不調、診断、対処方 その3 <下管>

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どのキーが閉まっていないかが分からないけれど兎に角、音の出方がスムーズで

ない場合があります。こういう場合はリードはいじらず楽器の点検から始めます。

11月以降、冬場は楽器が狂いやすい時期なのです。ですから、疑う順番は1番に

楽器、次にリード、それから本人の調子ということになります。

 

楽器の不調は原因追求が厄介な場合は思い切って専門家に尋ねるのが一番ですが、

自分でできる範囲の検討方法を「楽器の不調、診断、対処方」ご紹介しておりま

す。

 

ある一定の音から下が出にくい場合、音の出方がスムーズでない場合などのしっ

かりとした現状を把握してから検討をはじめます。

 

その為にはまず楽器の音の出方を考えてください。音を出すためにはリードが必

要です。次に指使いによって出す音の音程を決めます。つまり指1本のHはリード

からHの指までの間の楽器の中の空間が振動しています。Dの音を出す場合はリー

ドからDまでの空間が振動しています。音の空間が長ければ低い音が出るわけです。

もし、ある一定の音が出ない場合はその空間のどこかに穴が開いていて、楽器の

中のある特定な空間の正常な振動を妨げている分けです。ですから特定の音が出

ない場合はその一番下の指使いのキーからリードの間に問題があります。

 

 

Hで音が出ない場合>

Hはご存知のように左手の人差し指1本だけのフィンガリングですが、既にこの音

が出ない場合はそれより上のキーに問題があります。オクターブキーかトリルキー

が閉まっているかどうかを検討します。

 

Fisの音が不安定>

まず、決まった音が出にくい場合はその指使いのキーに問題があります。例えば

上管の音、H,A,G はまったく問題がないのにFisのキーを押したら問題がある、

と言う場合。(この現象はよく起こります)

 

この場合考えられることは

1Fis自体のキーが閉まりにくくなっている場合。或いは

2Fisのキーを押したら動くキー、(上管のH,A,Gの音が正常であることは確認済み)

 つまり上管にあるCBが浮いている場合が考えられます。

 

1)の対処法

まずFisが閉まらないのはGisとのバランスキーがねじ込まれすぎている為です。

フィッシュスキンでまずFisが閉まっているかどうかを確かめます。フィッシュス

キンをキーの下に差し込んで、自分が演奏する指の力でキーをフィッシュスキン

ごとふさぎ、フィッシュスキンをキーを閉じたまま引き抜きます。抵抗があるな

OK。抵抗なく、すっとフィッシュスキンが抜けてしまうようならFisキーが浮い

ている事になります。その場合はGisとのバランスが崩れているので、まずFis

つながっているGisの真上にあるねじを緩めます。Fisがしっかり閉まるところま

で緩めてしまします。(緩めすぎでかまいません)次にFisGisのバランス調整

に入ります。今度はフィッシュスキンをGisキーの下ではなく上、そしてFisから

出ているネジの下の部分へ当てます。フィッシュスキンに抵抗が出るまでネジを

閉めていきます。このFisGisの連結はGisキーを押しっぱなしにFis以下の音を

出すときに必要です。緩めすぎるとGisを押しっぱなしにしてFisの音を出せなく

なります。このFisGisのバランスキーは遊びがゼロですから、正確に調整しま

しょう。

 

2)の対処法は私のホームページをご覧下さい

 

 

Eの音が出ない場合>

FisまではOK。でもEから下が出にくい場合はEとそのすぐ上の小さなキーとのバラ

ンスを見ましょう。このキーも割合狂いやすいキーです。この小さなキーが閉ま

りすぎているとEキー自体が浮いてしまします。

 

 

D或いはEsの音が出ない場合>

EまではOK。でもDが出にくいのはフォークFを疑ってかかります。このキーは上で

ご説明いたしましたEキー自体、それからEキーの上の小さなキーとの関連性が高

いキーで、フォークFのネジだけで対処できる場合と、もう一度E関連キーとのバ

ランスをとらなければいけない場合が出てきます。

 

対処法

まず楽器の構造を見てください。Dキーだけを押しますとフォークFキーが開きます。

次にDキーを押したままEを押してください。このフォークFキーが閉じるのをご確

認下さい。普通はこのフォークFキーが完全に閉まった状態です。ここが浮いてい

ればEsより下の音が出にくくなります。もう一つフォークFキーと同様にEの上の小

さなキーが動くのを既にご覧になったと思います。この小さなキーとの連結はフォ

ークFとの関連キーです。フォークFだけの問題の時はこのキーの調整を見ます。

フォークFキーは何となく完璧に閉じにくいキーです。常に浮いているような気が

しますが、音が出ればあまり神経質にならない事をお勧めいたします。フォークF

キーの上にあるネジでこのキーの閉まり具合を調整いたしますが、閉めすぎるとE

自体が閉じにくくなります。

 

フォークFキーをいじった時にはそれに関連する他のE関連キーの動きも一緒に確認

しておきます。

 

さて、Dあたりまで点検したけれどキーの浮きは見当たらない。でも低音域の音に

問題がある場合。はFという可能性が出てきます。賢者の皆様はもう既にお分かり

と思いますが、キーの欠陥の診断は可能性を全て削除し、原因の範囲を狭めてい

けば良いわけです。最近、私の弟子で2本たてつづけに起きたのがこのキーの不

調でした。正確にはFの補助キーです。このバネガ弱っており、時々完全に閉まら

なかった事に起因していました。

 

キーの調整のほかに軸が浮いている場合も音程に支障をきたす場合があります。

 

これでも楽器の調子が悪い、吸い付きが悪い場合はどこかのタンポが合っていな

いとか、一番厄介なのが楽器自体の割れですので、じっくり本体を観察する必要

が出てきます。特に上管のトーンホールにかかっている割れがある場合は素人で

は処置しにくいので専門家に任せます。

 

楽器の調子が悪いのかリードの調子が悪いのかの一つの簡単な診断を下す方法が

あります。それはリードだけで試してみればよいのです。リードを楽器につけな

いでピアノを出してみましょう。スムーズに出ていればまずリードには問題は無

いと考えられます。もちろん、この診断だけでは100パーセントの答えは出な

いかもしれませんが、ある程度の目安にはなります。

 

3回に分けてお送りした「楽器の不調、診断、対処方」はこれでお仕舞いです。

少しでもお役に立てれば幸いです。不調の時こそ根気よく、気を取り直して問題

に立ち向かってください。

 

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 ■ 次号のテーマ:私の体験したドイツでの金婚式、それに続くパーティー

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