バックナンバー:28 2003/01/04



皆さん、新年明けましておめでとうございます。本年が皆様にとって素晴らし

い年でありますように!!!!!!!!!

 

昨年のマルクからユーロへの通貨が変更されてから1年が経過しております。私

だけでは無いと思いますが、やはり、使い慣れたマルクに概算して大体の見当を

つけて、高いか安いかの判断をしております。完全にユーロへの頭の切り替えが

できるのはいつでしょうか? ドイツにお住まいの皆様はいかがですか?

 

不景気なドイツで去年の年末に残業を強いられた人がいます。弁理士、建設局、

建設業者、特に設計技師、そして銀行の不動産クレジット担当者など・・・。

これは、今年から税制が変更され、不動産の購入、新築に対する補助金が今年か

ら減ることによる駆け込み契約によるもの。そして今まで10年以上自分が使用

していた不動産を売却した時に税金がかからなかったのに、今年から儲けに対し

15%の税金がかかります。売り手にとっても年末に売ってしまう事が税金対策

だったのです。

 

また、年金関係ではRiesterRente(リースター年金)と呼ばれている、年金特別

補助制度が施行されています。これは強制年金制度とは別に任意加入の年金を個人

で始めた場合に掛け金プラス年金補助金が毎年政府から支給される、というもの

です。但し、年金をもらう時点で住所がドイツにあることが条件です。もし。外

国で年金生活をする場合はこの補助金を即座に返却する義務がありますので、こ

の制度を利用したい、と考えていらっしゃる方はよく考えてください。ドイツの

プロのオーケストラ奏者は既にほとんどの方が任意年金保険に加入しているはず

ですから、その契約をリースター年金にスライドさせることが可能です。

 

先回のメールマガジンでの書き込み間違いがありましたのでここで訂正し、お詫

び申し上げます。

 

この飾り(アドベンツ・クランツ)は結構危ないのです。よくこの時期にドイツ

で家事が起こる原因にもなっています。は火事の間違いでした。

 

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  楽器の不調、診断、対処方 <キーに水が溜まる> その2

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元ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団主席オーボエ奏者ローター・コッホ氏は

本番前に両方のオクターブキーを外し、本体についているオクターブキーのふた

をはずし丹念にトーンホールを掃除をしてからステージに上っていらっしゃいま

した。

 

私がデトモルトの学生の頃、よく仕事をさせていただいたティボール・バルガ室

内管弦楽団のソリストとして何回かコッホ氏がいらっしゃいました。その日の第

1曲目は、弦楽器の曲だったので私も楽屋で待機していたのですが、そこへ彼が

やってきて、「吸い取り紙持ってるか?」と言うのです。持ち合わせの日本製の

化粧紙を渡してあげると、「何時も本番前はこうやってオクターブキーを掃除す

るんだ」と実際に目の前で楽器の掃除方法を説明してくれたのを覚えています。

その日はハイドンのオーボエ協奏曲が出し物でした。

 

私の場合は重要なソロが高音部である場合はやはりオクターブキーを外してある

方法で掃除をします。コッホ氏のように鍋蓋までは外しませんが、エアースプレ

ーでしゅーっ!と掃除をします。このエアースプレーですが、昔は写真機用のゴ

ミ取り用の物を使用しておりました。最近はコンピューター用品を掃除をするた

めの圧縮空気のスプレーを使用しております。このスプレーは私の歌劇場のロッ

カーにも常備させてあり、休憩時間でも1分以内でオクターブキーの水分を完全

に取ってしまうことができます。夏休みの東京で行った「カペラ・ブレメンシス」

の演奏会でも実は、曲と曲の合間に舞台裏でこのスプレーは活躍していたのでし

た。尚このスプレーは飛行機には持ち込めません。飛行機で移動する場合は現地

調達する必要があります。私の文章をお読みになって使用してみようと思われる

方に念の為に申し上げておきます。

 

キーに水が溜まる原因は温度差(楽器の温度、息の温度)により水蒸気が管の内

部、或いはキーに発生する場合。楽器内の水の流れの経路がキーにかかっている

場合。キーにごみが溜まっている場合。キーが浮いていて常に息漏れがしている

場合。などが考えられます。当たり前ですがキーに水が溜まる場合はリードや演

奏する本人の調子とは無関係です。

(バックナンバー:楽器の不調、診断、対処方 <キーに水が溜まる> その1

をご参照下さい)

 

これ以外に原因として多いのはキーが浮いている場合です。キーの浮きをチェッ

クするのにはフィッシュスキンを使用します。吸い取り紙や化粧紙では厚すぎて

正確なチェックはできません。チェックの方法として一番簡単なのは上管だけの

吸い付きテストです。この方法のやり方は、左手で普通に楽器の運指であるG

つまり上管キーが全部ふさがっている状態にし、右手は中指とか薬指とかで下の

穴をふさぎます。そしてリードを差し込む穴に口を当て思いっきり吸い上げます。

穴が完全にふさがっていれば漏れている感じがしないわけです。いくら吸っても

どんどん空気が入ってくる場合は欠陥が在るということです。ところがこの方法

をもってしても分からない場合が多いのがこの手の故障です。吸い付きテストは

管を全部ふさいだ状態で息を吸い込んで管の漏れをチェックするわけで、ほんの

少しのキーが浮いた状態のときはそのキーごと吸いつけてしまうので、このテス

トでは原因不明になります。

 

この場合は息漏れのテストをすることです。吸うのでなく吹き込むことです。タ

バコをお召しになる方なら(吸われる方も自分の楽器にタバコの匂いが付くこと

を嫌う方もいらっしゃいますが)タバコの煙をキーを閉じた状態の楽器に吹き込

む事で大抵の息漏れ、つまりキーの浮いている場所を確認することができます。

楽器の割れを発見するにもこの方法は有効です。

 

水が出るキーとして目標が分かっている場合はそのキーをチェックすれば良いわ

けですから割と早く問題解決、と行きたいところです。

 

しかし、なかなか簡単にはいかない場合があります。特にオートマチックの楽器

をご使用の方で第2オクターブキーに水が出る場合のキーの調整では、Gのキーと

のバランスが非常に敏感です。つまり浮きをなくす為にオクターブキーを閉めす

ぎるとGがしまりにくくなる、という弊害が起こります。特にGのキーは左手の薬

指で、もともと力の弱い指ですから少しでも抵抗が強いと演奏がとたんにやりに

くくなります。

 

このGのキーと第2オクターブキー、それからBGのすぐ上の小さいキー)の3つ

のキーは完璧に調整されている必要があります。キーの遊びはゼロです。

 

この3つのキーのバランスが崩れたときは、まずBと第2オクターブキーを緩めて

からGが楽に閉まることを前提として調整のやり直しです。

 

オクターブキー以外に水が出やすい部分は上管ではCB。下管ではFisとフォーク

Fあたりです。

 

上管のCBは上にも書きましたがGとのバランスがあり、更にオクターブキーの要

素が加わってくるのでなかなか厄介なことが多いです。CBに関しての詳しい調整

法は私のホームページ「私の助言ー楽器変ーメンテナンス」をご覧下さい。

 

下管に関しては次の機会に回したいと思います。

 

いずれにしてもキーのバランスをとる場合はいつも自分で何をしているのかを知っ

ている必要があります。それからキーを回す分量ですが、これもかなり微妙な場合

が多いので1ミリ回したら回しすぎ、ということもありますので細心の注意を払い

ながら行って下さい。初心者の方は楽器の構造をよくご覧になって、どこのキーを

閉めるとどうなるのか、開くとどうなるのかを考えながら対処して下さい。失敗し

ても楽器が壊れることはありません。バランスキーだけの問題であれば、元に戻す

事は可能なはずです。フィッシュスキンでキーが浮いている事を確認した場合は初

心者の方でもドライバーを持って浮きを止める事は可能です。ただやたらにネジを

回して試すのであれば、始めから楽器屋へお持ちになった方が無難です。原因不明

の時は自分でさわらず専門家の方に見ていただく事をお勧めいたします。


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