バックナンバー:20 2002/09/06


■7月22日 王子ホールにて行いましたカペラブレメンシス演奏会

の録音を徐々にですが私のホームページにて公開するつもりです。ど

うぞご期待下さい。

 

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  西洋音楽の土壌の違い

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皆さん、こんにちは。

ドイツはもう秋です。気温は20度前後。雨が降るともっと涼しくな

ります。私は四季の中で、秋が一番好きなのです。特に晩秋の空気が

冷たく透き通ってくる時期は最高です。

 

2週間後にドイツでは首相選が行われます。現首相はアメリカが行う

イラクへの参戦を拒否しました。もちろん、選挙を睨んでの行動と思

われますが、外交策として得策かどうかは別として、ドイツ国民の多

くはアメリカの強攻策には非常に批判的です。少なくとも私の周りの

ドイツ人のうちに、イラク参戦に肯定的な人は1人もいません。もし、

政権が国民の意見を反映すべきものであれば、彼の発言は今回の選挙

の票に現れてくると思います。

 

ミラノの飛行場は物が無くなる事で有名です。そこで警察がカメラを

設置し、荷物係りを監視したところ、従業員の37パーセントはその

犯罪にかかわっていたそうです。

 

先回のメールマガジンでは日本の三味線の話題でした。今回は西洋の

音楽的土壌について考えてみました。

 

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さて、西洋音楽に目を向けてみたい。歴史が培うヨーロッパの音楽を

世界中の人が愛好している。これは大変すばらしいことである。音楽

に国境は無い、とさえ言われている。確かにそうなのである。そして

日本で私も西洋音楽に触れ、専門家になれたわけである。

 

東京でも、ニューヨークでも、シドニーでも、北京でも、世界中いた

るところで世界的演奏家の名演に接することができる。ただし、これ

は鑑賞としての機能を果たしており、生活の基盤とはなっていない。

 

ドイツにはプロのオーケストラが約200団体ある。そのほとんどは

歌劇場専属のオーケストラで、地方自治体の税金で運営されている。

政治家は税金を使って劇場文化を継承する役目を放棄することはしな

い。教会にはアマチュアのコーラスがどこでもある。そしてこの合唱

団は教会行事にはいつも参加している。特殊であるが大変優秀な音楽

家を輩出している寄宿舎つき聖歌隊は、奨学金制度を取って優秀な人

材を常に確保している。皆さん御存知のウィーン少年合唱団はその最

高峰である。

 

このように、世界に名だたる少年合唱団にしても、へたくそなアマチュ

アの合唱団でも生活の中で音楽を機能させている。オーケストラでも

合唱でもよいのだが、日本でアマチュアの団体が演奏会を開く場合、

残念ながら、出演者個人の趣味で行っている領域をなかなか打ち破る

ことが出来ない。社会行事としての機能性、必要性がそこには発生し

ていない。

 

日本でバッハの「クリスマスオラトリオ」をドイツの来日メンバーの

演奏で東京の暖かいホールで聞くのと、ドイツの田舎のアマチュアの

オーケストラと合唱団が寒い教会の中、一杯のお客さんの中で聞くの

はどちらが印象に深いか、という事になると一概には、ドイツの方が

良い、とは言えないかもしれない。しかし、それが民衆に支持されて

いること。ただのアマチュアの発表会ではない。ということは事実と

して認識されている。

 

もっと古い中世の音楽をヨーロッパの石造りの宮廷や教会で聞くのと、

現代的なホールで聞くのとでは、おのずと差が出てしまうのは何とも

致し方ない。

 

技術的なことは日本でも充分学べる。日本のあちらこちらに外国から

優秀な教授陣を招いて講習会も開かれているし、外国で活躍されてい

た優れた日本人演奏家の方々も音楽大学で指導にあたられている。た

だ若い音楽家の卵は、そういった場所(ヨーロッパ)で一度は音楽の

勉強することは彼の音楽性を高める上で重要なことである。

 

 

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