バックナンバー:9 2002/04/01


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ロストロポーヴィッチが75

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先日チェリストのロストロポーヴィッチが75歳の誕生日を迎えた。

旧ソ連の体制に彼の人生は大きく左右され、時には外国公演、また

ソ連の大きな都市での演奏会活動を停止された事もあった。ブレジ

ネフ時代にとうとう奥さんと外国に共に出られる機会を得て、初め

て西側に亡命し思う存分演奏活動ができるようになった。そんな彼

の最近での一番思い出に残っていることは、とのインタビューに対

し、「東西ドイツの壁が崩壊した」とのニュースで、一番に彼が行

ったことは金持ちの知り合いのジェットを借り、すぐさまベルリン

に飛び、壁の前で自分と神のために演奏できた事。そして今一番や

りたいことは、との問いには、カブールの若者達に銃の代わりに楽

器を持たせ、その楽器を教える学校を作りたい、とドイツヴェレの

ラジオ放送で語っていた。また彼の演奏について語っていたことは、

自分は作曲家が作曲した曲にただ従っているだけではなく、その作

曲家がどういう状況下で曲を書いたのか、そういう背景を十分知っ

て演奏することで感情の移入をし新しく曲を蘇らせている、と語っ

ていた。更に長くBachを取り上げなかった理由は、ソ連人の激しい

気質がBachにあわず、Bachを演奏したことにより、開放する事に繋

がった、とも述べていた。

 

このロストロポーヴィッチの会話を聞き、いつもオーボエ奏者とし

て私が考えている事をここに書いてみたいというきっかけになりま

した。演奏家がなんらかの曲を演奏すると言うことは音での感情の

表現に他ならない。ただ楽譜上の音を並べたところで意味が無い。

音楽は演奏する者の感情が大切です。しかし間違った感情移入が無

いように演奏者は作曲者を知ること、作曲家の背景を知ること、そ

してその時代の演奏スタイルを知ることが大切です。その上で演奏

者の曲に対する解釈というものが出てくる。ここで、私は皆さんに

難しい芸術論をご披露するつもりはありませんが皆さんが何らかの

楽器を演奏する、或いは歌を歌う時の姿勢、考え方の基本になれば

と思います。

 

ドイツは331日より夏時間に入りました。夜中に調整が行われます

が人間は時計と違い1時間睡眠時間が短いだけで日中のペースが何と

なく狂ってしまいます。春休み中の娘達は時計なしの冬時間でまだ

のんびりと生活しています。

 

日本との時差は7時間です。


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