バックナンバー:5 2002/02/16


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ドイツの教育について(その1)

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去年全世界の高校生を対象にテストが行われ、その集計がイタ

リアのピザで行われた。この結果ドイツの高校生のレベルが惨

憺たるもので、政治家たちはドイツの教育制度の改正を試行錯

誤しているようである。

 

私の娘たちはドイツのごく普通の学校に通っている。日本の教

育制度と比べるとはるかにゆったりとしており、実は親も子も

この教育システムが大変気に入っているのである。

 

小学校に上がりたてのころは2時間、3時間という時間割があ

り、幼稚園に行って通っていたころより早く家に帰ってくる。

学校の始まる時間は一定でないのは困りものだが、早い日は、

(1時間目から授業がある日は)朝7時30分に家を出て行く。

学校の開始時間は7時45分である。冬の暗い時期はまだ星が

出ている中での登校で、子供が小学校の低学年の時は少々親の

方が心配であった。

 

昼にはほとんど家族全員が揃う。ドイツには学校給食なるもの

が無く、5時間でも6時間でも昼食の時間は無い。ただし、学

校でまったく食べないというわけではない。お弁当はちゃんと

持っていき、皆で食べる時間を途中で設けている。

 

宿題は、例えば夏休みとかの大きな休み中にはまったくゼロ。

こんなのんびりとした教育システムで他の国と比較したらたち

まち教育程度の低さが暴露するのは当然である。もし、このシ

ステムで他の国よりすばらしい点を取ることができたとすれば

脅威である。我々はドイツの人達が今になって成績がどうのこ

うの言い出したことに首をかしげている。

 

成績のつけ方も日本とはまったく違う。日本であればペーパー

テストでほとんどが決定される。ドイツでは筆記試験より、口

頭試験が重要なので、授業中の発言が多く積極的に授業に参加

している方が良い成績をもらえる。授業内容を全て把握してい

て筆記試験がすばらしくても、授業中に退屈してあくびをして

いると良い点がもらえない。

 

だから、ドイツの子供たちは授業中でも結構やかましい。点を

取るために子供たちが懸命に発言をしようとしているのではな

く、そういう教育方針なのである。間違った意見でも発言をし、

皆でディスカッションをする。そういう授業の進め方である。

 

そういう風に育てられたドイツ人であるからほとんどの人が討

論するのが大好きである。これには普通の日本人はついて行け

ない。私もドイツ人との討論には閉口する。ドイツ語であるか

ら、という理由もあるが結論が出ないことを事細かに検討して

いく気力を持ち合わせていないのである。

 

ドイツのテレビ番組を見ていても座談会が非常に、いや異常に

多い。そしてこの座談会で結論が出るということはまず無い。

 

去年のピザの結果、ドイツの教育界が恩恵をこうむった。??

と言えば皆さんが首を傾げるかも知れない。理由はこうである。

 

現在、ドイツの経済状況はそんなに自慢できるものではない。

東西合併の尾を未だに引きずっている。失業者もほぼ10パー

セントある。地方公共団体にしても、国にしてもお金が無い。

そこで、今までは教育部門への支出を削っていた。それが今回

の事件で削れなくなってしまった。ということである。

 

「この世の中、どこで何が幸いするか分からない。」と思いま

せんか?


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