バックナンバー:11 2002/05/03


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丸材磨きの効用?

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プロのオーボエ奏者はリードを自分で作るのが普通です。私のデトモルト

での先生であったヴィンシャーマン教授が優秀なリード工房隊を持ってい

た事は私のホームページのコーヒーブレイクで書きましたが、そのような

方はごく稀で、皆、自分自身に合ったスタイルでリードを作り、吹きやす

いように努力を積んでおります。本日のレターではリード作りの一部をテ

ーマに取ってお話を進めたいと思います。初心者の方は将来の考え方とし

て、またオーボエ奏者ではない方は話の種に、お付き合いください。

 

材料はフランスに生息する葦をオーボエ用のリード材として使っておりま

す。モロッコやトルコ等にもよさそうな材料があるとは思うのですが、ど

ういうわけか今のところリード用材料の卸業者は特に南フランスに集中し

ております。

 

さて、私はこの丸材を仕入れてリードを作ります。まず、仕入れに関して

重要な事は、私のリードのタイプに合う材料である事が全てと言っていい

ぐらい、リードの仕上がり具合はこの材料で決定してしまう、と言っても

大げさではありません。では、いったいどういう点に注意を払って丸材を

注文するのでしょうか?

 

私の場合は割りと固めの材料を好みます。固めの材料の選択は音色のはり

が強くなる傾向があります。オーボエ奏者によっては柔らかい材料を好む

方もおります。オーボエはどちらにしても、かなりするどい音色ですから

より柔らかい音色を求める方はきっと柔らかい材料をお使いになった方が

成果が上がると思います。私のオーケストラでのポジションはソロオーボ

エで、ブリリアントな音色で音というよりも、どちらかと言うと響きを出

したいと常々思いながら仕事をしております。またソプラノ音域であるオ

ーボエはやはり歌劇場での仕事でコロラトゥーラに匹敵してきます。グル

デローバという有名な歌手のようなコロラトゥーラ・オーボエ、それプラ

ス、オッターのような音色の変化に富んだメゾソプラノ・オーボエが合わ

さった物が私のイメージです。

 

そんなイメージにマッチさせる音を追及するのに一番重要なのがこのリー

ド作りで、その出発点が材料の選択です。しかし、注文時点ではどんな材

料が来るのか分からないのです。ここの業者が自分のリードのタイプに合

っているだろう、という経験値で注文するしか仕方がありません。ただ、

注文する時に直径をある程度指定できます。この直径は重要でリードの開

きをかなり決定的なものにします。直径が小さければリードの開きは大き

く強くなり、大きければ開きが狭く弱くなります。オーボエ用丸材は直径

9〜12ミリくらいまでを使用しています。またこの直径はガウジングマシ

−ンという、丸材の内側を削る機械の直径と一致していなければ材料だけ

細くしたり太くしたりしてもちぐはぐになります。

 

私のリード作りでの「はり具合」と「材料の硬さ」は、この丸材の段階で

既に分かっていて自分に合ったものだけを「かまぼこ材」にしていきます。

お料理の材料を厳選していくのと似たようなものです。「かまぼこ材」と

言うのは丸材を一定の寸法に切り、内側をカンナ(ガウジングマシーン)

で削った材料の事を言います。

 

さて、話が「かまぼこ」まで進んでしまいましたが、丸材の段階でまだし

なければいけない事があります。ウンチュ氏の本の写真22に「材料磨き」

の項目があります。材料を磨いてつやつやにすると果たして音が良くなる

のでしょうか? 答えはノーです。では何の為の作業でしょう? もちろ

ん汚れが付いているので、その汚れを落としてリードの良し悪しの判断に

する、という見かけの判断の助けになりますが、実は違います。リードの

作業は百分の一ミリ単位の作業です。丸材の汚れはその測定に大きな誤差

を与えるのです。ですからリードの表皮にある汚れを取り除く作業が必要

になる訳です。

 

皆さんの頑張って良いリードを作って楽しくオーボエを演奏してください。

 

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